11月4日~8日にかけて、キューバで開催されたカクテルの世界大会「ワールドカクテルチャンピオンシップ(WCC)」に、兵庫県神戸市でバー「SAVOY hommage(サヴォイ・オマージュ)」を営むバーテンダー、森崎和哉さん(45)が出場。狙っていた世界一には届かなかったものの、出場した「ロングドリンク部門」と「学科試験」で1位を獲得した。
コロナ禍での中止を経て3年ぶりに開催されたWCCには、約60の国と地域から代表が1人ずつ出場した。各国の選手はあらかじめ「食前酒部門」「スパークリング部門」など5つの部門に割り振られ、森崎さんは「ロングドリンク部門」に挑戦することに。(ロングドリンク…容量の大きいグラスに氷を入れ、長時間かけて楽しむカクテル)
森崎さんがこの大会のために創作したカクテルは「ビューティフル・ジャーニー」(意味:美しい旅)。日本の6種類のハーブで香りづけした蒸留酒「六ジン」をベースに、マラスキーノ(さくらんぼ)リキュール、青りんごピューレ、赤しその自家製シロップなどを使い、パンチと奥行きのある味わいに仕上げた。
「このカクテルで表現したかった『美しい旅』とは、これまでの思い出(過去)と、これから出会う未来のワクワク感の両方、つまり時間を超えた旅です。日本の素材を使った『六ジン』は過去を、他に世界中の素材をミックスすることで未来を表しています」(森崎)
森崎さんはこの大会のために、数か月前から店の開店時間を遅らせて準備に力を入れてきた。英語でのプレゼンテーションも求められるため、英会話教室にも通った。開催場所となる海に面したリゾートホテルに着くと、ここが晴れ舞台になることを「最高やね」と自身を奮い立たせる。
いよいよ競技が始まった。まずは、カクテルに添えるガーニッシュ(飾り)作り。これを作る過程も審査対象となり、15分以内に5個作らなければならない。森崎さんの作品はキューバの国花「マリポーサ」をイメージした。
競技は3人ずつおこなわれる。着席して比較的シンプルな飾りにじっくり取り組む選手が多い中、工程が複雑でスピード重視の森崎さんは立って作業。演舞のような流れる動きが人目を引き、観客がどんどん増え人だかりに。
会場を魅了した森崎さんだが、どこか表情が焦っている。聞けば舞台裏で、下準備の時間がほとんどなかったそう。しかも入場の際に、体が当たって他の選手のバー器材を落としてしまった。ペースをつかめず、本来は予備を含め6個作るはずが、時間制限で5個止まりに。