戦後、高度経済成長を迎えた日本では自動車は若者の憧れのアイテム。自動車をテーマにしたヒット曲も数多く生まれました。今回はそんな昭和の自動車ソングについて、シンガーソングライター・音楽評論家の中将タカノリと、シンガーソングライター・TikTokerの橋本菜津美が紹介します。
【中将タカノリ(以下「中将」)】 最近はあまり聞きませんが、昭和には自動車をテーマにしたヒット曲がいろいろとありました。
【橋本菜津美(以下「橋本」)】 そうですね、最近もないことはないんだろうけど、すぐに思いつく感じではなんですね。
【中将】 「若者のクルマ離れ」なんて言われて長いですからね。菜津美ちゃんは現在29歳ですが、実際、同世代の間ではどんな感じなんでしょう?
【橋本】 やっぱり同世代では車を持っている子のほうが少ないですね。50代など上の世代の人と話していて、車への思い入れに感覚の違いを感じることもあります。
【中将】 90年代くらいまでは男がいい年して車を持ってないとカッコ悪いという時代でしたからね。特にバブル期は高い車に乗っていないと女の子から見向きもされなかったような話はよく聞きます。
【橋本】 女の子としては「デートのとき、かっこいい車で迎えに来てほしいな」という思いは今でもあります(笑)。
【中将】 やっぱり本音はそうですよね(笑)。1950年代にロック音楽の創始者の1人として活躍したチャック・ベリーは、若者から共感を得られる歌詞のテーマとして恋愛、学校、車を挙げました。その影響があってか、時代の必然なのか、同じ頃から日本の数々の自動車ソングが流行し始めるんですね。代表的なのは1964年に小林旭さんが歌った「自動車ショー歌」でしょうか。
【橋本】 「あの娘をペットにしたくって ニッサンするのはパッカード」……この歌、私には何を言っているのか、まったくわかりません!(笑)
【中将】 車種名を何十個も無理やりつなげて歌詞にしているんですよ(笑)。ちょっとコミカルな歌だけど、当時どれだけ車が若者の関心事になっていたのかよくわかりますね。
次の曲は、もうちょっとお洒落なポップスです。平山三紀さんの「真夏の出来事」(1971)。恋の終わりを感じながらドライブするカップルを歌った切ない曲ですね。