岸田文雄首相が2023年の年頭記者会見で掲げた「異次元の少子化対策」。
具体的には▼児童手当など経済的支援の強化 ▼学童保育や病児保育、産後ケアなどの支援拡充 ▼働き方改革の推進 などが挙げられる。
生活スタイルの多様化は、非婚・晩婚・晩産、都市部での核家族化が進み、地域社会とのつながりも希薄となり、育児環境にも大きな影響を及ぼしている。
こうした中、出産前後の母親へのサポートを行う「産後ケア」のニーズが高まっている。
産後ケアは、育児を始める際に生じるさまざまな悩みを打ち明ける場がなく、不安な日々を送ることがないよう、出産後の母親が心身を休めながら、授乳や沐浴などの育児技術を身につけ、育児に対応できるよう、助産師などの専門家がサポートしている。
“産後ママ”と呼ばれる分娩後の母親には、急激なホルモンの変化によるからだの変化が初めて起こるという。育児や母親としての役割に不安や焦りを覚え、様々な心理的・社会的ストレスに直面することになり、精神的に追い詰められてしまうケースも少なくない。妊娠・出産・産後・育児という、切れ目なく寄り添う支援が求められる。
一般社団法人・日本産後ケア協会(事務局・東京都千代田区)は、特に現在の日本では、核家族の増加や地域社会からの孤立により、子育てについて相談できる人が身近にいないなどの状況があり、子育ては母親として重要な役割だと理解していても、様々な負担や不安、いら立ちを感じる母親が増えていると指摘する。
■「産後ケア」ニーズの高まりの背景に…
全国225か所の児童相談所が、ネグレクト(育児放棄)や虐待をめぐる相談として対応した件数が増加(厚生労働省まとめ)、2020年には20万件を超えた。
また、妊娠中または産後1年未満に死亡した女性357例のうち、自殺が102例で死因の1位となった(人口動態統計を基に国立成育医療センターなどが2018年にまとめたもの)。こうした背景が「産後ケア」のニーズの高まりにつながっている。
■関西で先駆的な産後ケア施設の”実情”