しかし、敷地内で部屋を確保するのは限界がある。増床が可能なのは2床のみ。目標金額を500万円に設定して、2月13日からクラウドファンディング(CF)を始めた。購入型という、目標達成時にリターン(返礼)という形式を取る。また、“オール・オア・ナッシング”という、未達成の場合は全額を返還するという条件付きだ。
期間は2023年3月31日まで。支援は3千円から。
栗本部長はCFを決断した理由を、「産後ケアへの理解を、世間一般に深めてもらうため」と説明する。あえて関係者や篤志の寄付形式を取らないとした。
■妊活するか、夫婦で悩んだ時期もあった…
利用者の30代の女性は、3人目を出産して、まだ3週間。「育児の悩みはたくさんある。例えば、ミルクを飲ませている間に寝てしまうので、結果的にミルクを飲ませられず、体重が減少してしまったことや、夜、自分自身が寝られずに辛くて体力的に厳しい日が続くこともある。助産師のアドバイスで改善できたこともあったし、悩みを伝え、話を聞いてもらえるだけでも気持ちが楽になった。産後うつは誰にでもある現象で、ようやく国も本腰を入れてくれたのかと思うと嬉しい。ただ、もっと早く打ち出せなかったのかとも思う。妊活するかどうか、夫と悩んだ時期もあったが、後悔しないために出産を”決断”する時代なのかもしれません」と話す。
2022年6月、横浜市から委託を受けた助産院で産後ケア中の乳児(女児・当時生後2か月)が死亡した。母子で助産院に宿泊し、母親の睡眠中は、助産師が乳児別室で預かっていたが、助産師が食事の準備や洗濯物の取り込みのために部屋を離れて約30分後、戻ると乳児は呼吸をしていなかった。こうしたことから、「産後ケアセンター小阪」でも、乳児の見守りのためのベビーセンサーの購入や、安全管理マニュアルの整備が求められる。こうした費用を見積もると、500万円でまかなうことが難しいという。
東大阪市は、町工場が集まり、住民の高齢化が進む。出産女性の人口減少も懸念されている。こうした状況を踏まえ、センターを運営する医療法人・竹村医学研究会の竹村真紀副理事長は、東大阪市について「今後少子化対策として、子育て世代を呼び込む街づくりの一環として、産後ケア事業のサポートに力を入れる動きが出てきた」とみている。