世界文化遺産・比叡山延暦寺(滋賀県大津市)を総本山とする天台宗の開祖、伝教大師・最澄(767~822)らの遺徳を偲ぶ「祖師先徳鑽仰大法会(そしせんとくさんごうだいほうえ)」の最後を飾る総結願(そうけちがん)奉告法要が16日、延暦寺・根本中堂で営まれた。
この大法会は、2012(平成24)年に始まり、最澄の生誕1250年と没後1200年の大遠忌をはさんで11年間に及んだ。
この11年間、最澄の弟子、慈覚大師・円仁(じかくだいし・えんにん 794~864)の1150年忌、比叡山内での苛烈な修行、千日回峰行の創始者・相応和尚(そうおうかしょう 831~918)の1100年忌、日本で浄土教を広めたとされる恵心僧都・源信(えしんそうず・げんしん 942~1017)の1000年忌と、天台宗の礎を築いた高僧(祖師)の遠忌を迎えた。
比叡山は法然や親鸞を輩出するなど「日本仏教の母山」と呼ばれており、特に源信の1000年忌は、延暦寺のほか知恩院(浄土宗総本山)や西本願寺(浄土真宗本願寺派本山)へ延暦寺の僧侶が出仕し、合同で祈りを捧げる画期的な法要も執り行われた。
当初は10年間の予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で1年延長された。
この期間、法要の導師を務める天台座主も第256世・半田孝淳座主、257世・森川宏映座主(いずれも故人)、現在の258世・大樹孝啓座主と3代にわたった。
根本中堂の灯火「不滅の法灯」を分灯して、全国の約2600の寺院を4つの地区に分けて行脚する企画もいったん“凍結”となったが、現在進んでいる根本中堂の大規模改修工事終了の際(2027年予定)に、改めて行われるという。
■「宗祖列祖の疫病退散の祈りに心同じく」大樹孝啓・第258世天台座主
大法会が開催される前年の2011(平成23)年に東日本大震災が発生、結願が近づいた2020(令和2)年に新型コロナウイルスのまん延、2022(令和4)年にはロシアによるウクライナ侵攻と、世界規模で憂慮すべき問題に浮上した。
法要で大樹座主は、こうした事態に触れ、「コロナ感染症の渦中に結願を迎えて、宗祖列祖の疫病退散の祈りに心を同じうす」と述べた。
コロナ禍と戦乱に直面し、大樹座主は私たちの生き方として、最澄の教えのひとつ、「忘己利他(もうこりた / 自分のことを忘れ、他の人々のために尽くす)」の精神を改めて思い返したという。