次に、「立法行為の違法性」にも及んだ。
旧法が明らかに憲法の規定に違反することに照らせば、立法当時の社会情勢などを踏まえても、立法を行った国会議員には過失があるとした。
そして、「除斥期間の適用の可否」に踏み込んだ。
除斥期間(20年)の起算点は優生手術の時であり、訴訟は期間の経過後に起こされた。しかし、最高裁の判例によれば、著しく正義・公平の理念に反する特段の事情があるときは、効果を制限できる。
旧法は明らかに違憲であり、立法を行った国が、除斥期間の適用によって賠償責任を免れることは、個人の尊厳を基本原理とする憲法が容認しない。しかも国は、旧法を改正や廃止をしたり、補償措置を講じたりすることを怠った。
また、不妊手術を受けるに当たって法的根拠や理由を十分に説明しなかった。さらに”優生施策”を推進して差別・偏見を助長し、旧法が権利を違法に侵害するものであると被害者に認識させることを妨げてきたとした。
この状態のまま除斥期間を適用すれば、補償もないまま原告らに損害を強いる結果となり、正義・公平の理念に著しく反すると指摘した。
これらを踏まえれば、国が旧法を違憲と認めた時、または違憲判決が最高裁で確定した時から6か月を経過するまでの間は、除斥期間の経過による効果が発生しないと解することが相当であり、原告らの損害賠償請求権は消滅したとは言えないと一歩踏み込んでいる。
旧法の違憲性を認める判決が確定するのを見据え、新たな救済の道を示した。
判決を受け厚生労働省は「国の主張が認められなかったものと認識している。今後、判決の内容を精査し関係省庁と協議したうえで適切に対応したい」とコメントした。
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■「妻と一緒に、喜びを分かち合いたかった…」「心の傷は消えない」原告ら語る
原告の1人で、妻(当時89歳)を2022年6月に亡くした兵庫県明石市の男性(91)は「妻と共に喜び合いたかった」と涙ぐんだ。高齢化が進む被害者に残された時間は少ないと訴え、「これ以上待つことはできない」と国に早期解決を求めた。
兵庫訴訟の原告5人のうち、もう1人、兵庫県在住の男性(当時81歳)が2020年11月に他界した。この男性も80代の妻とともに提訴していた。
脳性まひのある神戸市在住の女性(67)は、判決後「国は早くみんなに悪かったと謝ってほしい。体の傷は薄れても、心の傷は死ぬまで消えない」と訴えた。
弁護団長・藤原精吾弁護士は「国に対して、(旧優生保護法問題の)全面解決を促す判決だ」と評価した。
兵庫訴訟をめぐっては、新たに聴覚障害がある女性2人が3月3日、神戸地裁に提訴した。原告弁護団によると、「旧優生保護法が、1996(平成8)年に母体保護法として改正された後も、国は違憲だったと認めず、当時は適法だったとして被害救済をしなかったため、原告らが訴え出る状況ではなかった」としている。