2023年は、日本に密教を広めた弘法大師・空海(774~835)の生誕1250年を迎える。
遣唐使の長期留学僧として唐に渡り、806(大同元)年、本来は20年の留学期間をわずか2年という異例の速さで帰国した空海は、 密教の伝達者として朝廷に認められ、その普及に努めた。816(弘仁7)年には、嵯峨天皇から高野山を下賜されて修禅道場とした後、平安京鎮護のための官寺だった東寺(教王護国寺)を、同じく嵯峨天皇から823(弘仁14)年に下賜され、密教の根本道場とした。この時、空海は真言宗を立教開宗し、今年(2023年)、1200年を迎えた。
空海は、高野山を修行の場として開いたが、布教は多くの人が集う都が最適と考え、平安京にある東寺(世界文化遺産 京都市南区)を布教拠点とした。こうした経緯から、東寺には空海が唐から持ち帰った密教の教典や法具の多くが納められている。
空海が835(承和2)年に高野山で入定(にゅうじょう・永遠の瞑想に入ること)後、「空海(弘法大師)伝」が生まれ、鎌倉時代以降には、空海の誕生から入定までを絵や詞書で表現した絵巻が出現する。
そこで東寺・宝物館では2023年の春期特別公開として、東寺に伝わる重要文化財「弘法大師行状絵巻」十二巻を展示する(3月20日~5月25日 各巻から一点を展示 前後六巻ずつ展示替えあり)。
「弘法大師行状絵巻」は南北朝時代、空海生誕600年を記念した1374(文中3・応安7)年 に計画され、15年後の1389年に完成した。空海の生涯を詞書(ことばがき)と絵であらわし、東寺の興隆政策や教学面の充実を目的として編纂された。
詞書は書に長けた公家のほか、大覚寺、青蓮院の僧侶ら11人が寄せ、絵は4人の絵師が分担して描いた。全59項目あり、鎌倉時代までに伝わる空海にちなんだ図画と異なり、東寺と関連深い、独自の項目も見ることができる。