平安時代、宮中で始まったとされる「御懺法講(おせんぼうこう)」が30日、 京都・三千院門跡(京都市左京区大原)で執り行われた。
御懺法講は1157(保元2)年に後白河天皇が宮中の仁寿殿(じじゅうでん)で営なまれだのが始まりとされる。比叡山延暦寺を本山とする天台宗で最も重要な儀礼と位置づけられ、宮中法会(ほうえ)として脈々と行われてきた。
しかし、明治政府の廃仏毀釈(きしゃく)や第二次世界大戦などの影響でいったん途絶え、1979(昭和54)年に京都・五ケ室門跡(※)の一つ、三千院で復興された。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2020~21(令和2~3)年の2年間は非公開で行われた時期もあったが、今年(2023年)、復興されて45回の節目を迎えた。
毎年5月、京都御所の紫宸殿を模した三千院の宸殿(しんでん)で執り行われる御懺法講。
新緑の境内に独特の旋律をつけて経文を唱える仏教音楽・声明(しょうみょう)と雅楽の調べが響きわたる、古儀にのっとった法会は、元来、諸悪の行いを懺悔(ざんげ)し、心の中にある「貪り(むさぼり)、怒り、愚痴」の三つの毒を取り除く意味合いを持つ。
三千院の本尊は伝教大師・最澄の作と伝わる秘仏の薬師如来で、2003(平成15)年、世界平和を祈願して開帳されたことがある。
今年は、御懺法講復興45年を記念して、秘仏本尊の代わりに礼拝する「御前立(おまえだち)」の脇侍として「日光菩薩」と「月光菩薩」を地元の有志が寄進・奉納し、新たに「薬師三尊」として安置された。
導師を務める三千院の小堀光實(こぼり・こうじつ)門主らが雅楽の調べに乗せて声明を唱え、花びらをかたどった散華(さんげ)がまかれ、約2時間の宮中法会が再現された。