【中将】 Twitterなどで、まだ10代なのに昭和の音楽をコレクションして、レコードショップにも通っている子たちを大勢見ます。何か変わってきていますね。
【ミッキー】 やっぱりネットの世界になって情報を掘り下げてやすくなったからじゃないですか。そう言えば今月も、いきなり僕がデビューした時の1968年のザ・ゴールデン・カップスのアルバムを持ってきて「サインしてくれ」という子がいましたね。「何でこれを持っているの?」と聞くと、「いやぁ、探し当てて……」だって。なんとも言えないですね(笑)。
長年、作曲していて感じるんだけど、たとえば20代の子だと、意外と僕が20代の頃に書いた曲が合ったりするんだよね。10代で書いた曲が10代の人に合ったり。だから昔、若い歌手が歌っていた曲が、今の若い人たちに響くのは当然のことなのかもしれない。ザ・ゴールデン・カップスだと、「愛する君に」(1968)とかさ。自分だともう恥ずかしくて歌えないような歌詞だけど、それが若さのエネルギーというか、若い人には受け入れられる要素なんでしょうね。
【中将】 曲にこもっている思いの部分ですね。ちょっとざっくりした質問ですが、現代の音楽と、昭和の音楽ではどういう違いがあると思われますか?
【ミッキー】 昔の音楽は流れを重視して、構成に破綻がないことを重視していたけど、90年代にハウスミュージックが主流になった頃から、サンプリングだったり、どこかから持ってきたものを組み立てていくデジタル的な発想の作り方に変わっています。
僕でも、曲を頼まれて「歌詞はない?」って聞くと「とりあえずAIで出してみました」みたいなことがあるんですよね。でも内容は悪くない。昔と比べて大きな違いってのはそういう所じゃないかなと思います。でも僕はそれを否定するつもりは全くないんです。かっこよさを求めればそういう作り方になってくると思う。
【中将】 昔に比べると機材面でもクリエイティブな環境が整ってきてますからね。でも、そういう中で、あえて昔の音楽が好きだという若者が増えているのは面白いですよね。
【ミッキー】そうだね。例えば僕が仕事でバラックみたいの書いてくれと言われたとき、ちょっとブランデーを飲みながらやると、その時代の感覚、タイム感があってきたと感じることがある。時代ごとにあるタイム感というか、ビート感というか、それが心地よかったりするんじゃないかなと思いますね。
僕が音楽を始めたのはリズムキープにクリックを使わない時代。ゴダイゴのアルバム「西遊記」(1978)でも使ってない曲があるくらいだから。あの揺らぎ、流れ、空気、風のようなものが心地良いと感じる人が多いのかもしれない。
【中将】近年、昭和の楽曲が再びメディアミックスされていますが、ゴダイゴはメディアミックスという点で、画期的な存在だったと思います。「ガンダーラ」(1978)、「モンキー・マジック」(1978)はもちろん、いろんなドラマや、アニメ、映画の主題歌も手がけられたり。
【ミッキー】初めからそう計画していました。ザ・ゴールデン・カップスでいろいろ経験させてもらったから、ゴダイゴを始める上で、活動方針はかなり整理できていたんです。バークリー音楽大学での経験も大きかった。音楽も習ったけど、なによりアメリカのマーケティングは刺激的でした。
だからコマーシャルも子ども番組も、テレビで音楽が流れる仕事は全部取ったんだよね。日本中がゴダイゴのサウンドに慣れるように仕向けたんです(笑)。「ガンダーラ」がヒットするまでの3年間くらいはそういう時期。
僕はGSから入ったので、「売れなきゃバンドじゃない」という思いがあった。だからゴダイゴも絶対売れなきゃと思っていたし、絶対売れると信じてたんだよね。時間はかかったけど、みんなが耳慣れた頃にようやく売れることができました。
【中将】 計画的に積み重ねていって、大きなヒットにつながったわけですね。
【ミッキー】 はい。それからもメディアに音楽を入れる仕事が来ればとにかくやりました。その上で、結局はいい音楽を作るのが一番大事だなということに行き着きました。将来を考えれば、「スタンダード」と呼ばれるものを作らないといけない。当時は「30年愛される音楽を」と思って作っていたんだけど、もう40年以上も経っているんですね。
【中将】 近年、ゴダイゴの曲も含め数々の昭和の楽曲が、再びメディアミックスされているわけですが、この現象についてどう思われますか。
【ミッキー】 もともと、何回も使われるような曲を作っていきたいというのがあったので。個人的なテーマの曲にしても、宇宙規模の曲にしても、やっぱりいいものを作ったから、そうなっているのかなと思います。