【橋本】 そんなに詳しいわけではない私でも、昭和の歌手は声だけで誰かわかることが多いです。
【中将】 総じて、音楽や芸能は進化してアーティスティックになればいいってもんじゃないということですね。もちろん現代の音楽にもいいものはたくさんあるんだけど、逆に置き忘れてきてしまったものもある。今の若い人たちはそういう部分に魅力を感じてるのかなと思います。
最後に触れておきたいのがシティ・ポップ。シティ・ポップというのは、1970年代、1980年代に歌謡曲や和製ロックへのアンチテーゼみたいな感じで生まれた、お洒落で洗練された楽曲たちを、後付けでそう呼んだもの。それが2010年代後半にYouTubeやサブスクが普及すると、一気に欧米のリスナーに支持されるようになったというわけです。ミッキーさんもおっしゃっていた林哲司さん作曲、松原みきさんの「真夜中のドア〜Stay With Me」なんてApple Musicで92か国のJPOPランキングでTop10入り、Spotifyでは2,300万回以上再生というんだからすごいですよね。
【橋本】 日本の音楽、しかもジャンルごとが海外で注目されることってなかなかありませんよね。
【中将】 海外への音楽輸出に関心がなかった日本の大手レコード会社も、近年ようやくこの波に気が付いて、シティ・ポップ、シティ・ポップと言い出すようになりました(笑)。現在、すでに海外でのシティ・ポップブームはひと段落してしまったようですが、日本ではまさに今、逆輸入現象でシティ・ポップが流行っているわけです。
さて、今回は「昭和歌謡・昭和ポップスブームを徹底解剖」というテーマでお送りしてきました。メディアミックス、現代ポップスの複雑化の反動、海外での再評価……いろんな現象が同時に重なったことで今、あらためて昭和の楽曲にスポットがあたっているということですね。