旧優生保護法(1948~1996年)のもとで、障がい者らが不妊手術を強制された問題で、 国会がまとめた調査報告書が19日、公表された。都道府県などに残っていた手術記録は6550人分(厚生労働省提供資料の実施件数24,993件の約26%)。最年少は当時9歳の男女2人だった。 男児は昭和30年代後半に、女児は同40年代後半に強制手術を受けた。目的を偽って手術した実態も発覚した。
この調査は2019年に成立した被害者救済のための一時金支給法で定められ、衆参両院事務局が2020年6月から約3年間行った。国会として、過去の立法過程を振り返るのは異例で、報告書は両院議長に提出されたが、 責任の所在については触れられていない。
報告書は約1400ページにわたり、19日から衆参両院のホームページで公開されている。 強制不妊手術が最も多かったのは1955(昭和30)年で、旧優生保護法下では2万4993人が手術を受けたとされ、全体の約75%が女性だった。20歳未満の不妊手術件数は1955年(年齢階級別の統計開始)以降、全国で少なくとも2717件あった。
中には盲腸(虫垂炎)など虚偽の病名を告げて手術を受けさせたケースも確認されている。本人の同意がない手術は、全体の約66%を占めた。都道府県別の最多は北海道の3224件で、宮城の1744件、大阪の1249件と続く。
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旧優生保護法をめぐっては、2018年1月以降、全国で現在までに38人(うち5人が死亡)の被害者が12の地裁・支部に提訴している。 地裁・高裁判決の16件のうち、国に賠償を命じたのは7件あった。国はすべてで控訴・上告している。こうした中、多くの被害者の実態把握は遅れ、水面下に埋もれたままとなっている。
このうち、2019年2月に神戸地裁に国家賠償請求訴訟を起こした神戸市の女性(67)は、長期化する裁判にいらだちを隠せない。そして、「調査の結果、私以外にも本当にひどいことが行われてきたことを、あらためて知った。どれだけ待たせるのか、いい加減、早くけりをつけてほしい。私より高齢の被害者もいる。時間はあまり残されていないので、早く安心させて欲しい」と訴えた。
脳性まひで手足が不自由なこの女性は、12歳だった1968(昭和43)年、理由も知らされずに家族に病院に連れて行かれ、手術を受けたという。この女性を含む男女5人(うち2人死亡)が国家賠償を求めて起こした訴訟(兵庫訴訟)で、2021年8月の一審・神戸地裁判決は、旧優生保護法を違憲とした上で女性らの請求を棄却したが、今年(2023年)3月の二審・大阪高裁判決は国に賠償を命じた。国側はこれを不服とし、最高裁に上告した。
また、兵庫訴訟の原告団長・藤原精吾弁護士は、「優生保護法がなぜ制定され、人権侵害が拡大したのか。長期間にわたり被害が放置され、今なお被害回復が進まない実態への検証を行うべきだ。被害者には、もう時間が残されていない」とコメントした。
そして「各地の裁判を通して明らかになったのは、旧優生保護法が被害者の人生に深刻な被害を与えてきたということ。その被害実態は、アンケートに対する回答程度で明らかになるものではない」と苦言を呈した。