神戸出身の作曲家・大澤壽人 没後70年に”平和” への祈り、凱旋公演 神戸文化ホール50周年 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

神戸出身の作曲家・大澤壽人 没後70年に”平和” への祈り、凱旋公演 神戸文化ホール50周年

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1973(昭和48)年に開館した神戸文化ホール・オープニングセレモニー ※画像提供・(公財)神戸市民文化振興財団

 2009(平成21)年、大澤が教鞭をとった神戸女学院で、1人の女性が「大澤資料プロジェクト」が立ち上げた。 その女性は生島美紀子さん。プロジェクトの代表を務める。生島さんは「日本の近現代における音楽界で、ややもすると葬り去られそうになっていた大澤作品を、再び世に送り出すミッションを感じた」という。

「ガラ・コンサート『神戸から未来へ』」に向け、プレ講義する生島美紀子さん<2023年2月5日 神戸市中央区>

 大澤の、海外における戦前の大活躍について、生島さんは「メジャーリーグで活躍する日本人選手」と表現する。2005年に膨大な資料の山から見つけ出した『ベネディクトゥス幻想曲』の楽譜を見て、この名曲を復活させねばと思ったという。しかし、その思いに周囲から賛同を得られず、長い年月を費やした。

 ようやくそれが実現して世に送り出せた事に、生島さんは研究者として安堵した。そして、「ロシアによるウクライナ軍事侵攻は収束の兆しもないなか、大澤による平和へのメッセージのように感じる」と話す。
 折しもコンサートが開催された5月19日、広島でG7(先進7カ国首脳会議)が開幕。世界の首脳が被爆地・広島に集結し、平和への決意を内外に示したこの時期に、神戸でも大澤の平和へのメッセージを発信した意義は大きい。われわれがこの曲を聴き、得たものが大いにあると思う」と涙ぐんだ。

 コンサートでは、世界に誇る気鋭のマエストロ・山田和樹氏のタクトで神戸市室内管弦楽団と同混声合唱団が演奏した。

 山田氏と神戸文化ホールとは2019年、東京混声合唱団と神戸市混声合唱団との合同公演でタクトを振ったのが最初。
 山田氏は本番を前に、ラジオ関西の取材に対して「『ベネディクトゥス幻想曲』は、本当に先鋭的な音楽。1944年という戦中期に、日本人がこのようなハーモニーやリズムを曲として書いたのかと思うと、ただただ驚く。”和”を思わせるフレーズや、ジャズのスゥイングのような揺れもある。タクトを振って、オケが音を出して初めて発見することも多かった」と目を輝かせた。

山田和樹氏 2009年、第51回ブザンソン国際指揮者コンクールで優勝、2023年にはイギリス・バーミンガム市交響楽団首席指揮者に就任 <2023年5月19日 神戸文化ホール>※画像提供・(公財)神戸市民文化振興財団

 山田氏は2017年9月、東京・サントリーホールで開かれたサントリー芸術財団・サマーフェスティバル「再発見“戦前日本のモダニズム”~忘れられた作曲家 大澤壽人」で、『ピアノ協奏曲第3番 神風協奏曲』や『交響曲第1番』など大澤作品のみ3曲を指揮している。山田氏は大澤が素晴らしい作曲家であることを十分理解している。
 開港以来150年あまり、モダンで時代を先取りしてきた神戸で50年、文化・芸術の拠点となったホールの祝祭で、なおかつ合唱付きならば、ベートーヴェンの「第九」など西洋の大作を選びがち。
 しかし、オファーがあった数年前から、このコンサートは”神戸が生んだ作曲家・大澤壽人の没後70年”ということを念頭に、『ベネディクトゥス幻想曲』を中心にしたいと感じていた。


【神戸文化ホール50th Anniversary 公式サイト】

【大澤壽人 煌きの軌跡】



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