昭和の“デパート”と聞いて、週末に親と訪れて心おどらせた少年少女時代を思い出す人も多いのではないでしょうか。子どもはもちろん、大人をも魅了したのが、かつてのデパートのシンボルともいえる「回るお菓子」売り場。開発元である株式会社松風屋・開発本部研究室の山内さんに、開発のきっかけや当時の話を聞きました。
―――松風屋の歴史は?
【山内さん】 弊社は1900(明治33)年に菓子製造業・松風屋として創業し、当時は『松風煎餅』というお菓子をおもに製造していました。その後、1923(大正12)年に菓子の卸売部門を開設、1950(昭和25)年に株式会社松風屋に組織変更しました。
―――日本初の「回るお菓子」売り場はいつ開発された?
【山内さん】 1959(昭和34)年、名古屋の名鉄百貨店に第一号店が導入されました。今年で誕生64年を迎えます。当時は『V100(バラエティ100)』という名称で導入され、その後『G&H(グルメ&ヘルス)』を経て、『Gram(グラム)』へと変化していきました。
―――なぜ『Gram(グラム)』に名称変更した?
【山内さん】 売り場のリニューアルに伴ってお菓子の量り売りを始めたことをうけて“かわいらしいネーミング“にすることとなり、「量り売り」と関連のある『Gram(グラム)』に名称変更しました。
―――「回るお菓子」売り場を作ったきっかけは?
【山内さん】 1958(昭和33)年ごろ、先代会長の近藤琢三がフランスのスーパーで小さな円形をしたアイスクリームの販売台を見たことがきっかけだそうです。
そのアイスクリームの販売台は固定式で、客が周りを移動して好きな商品を買う形式でした。これを見て思いついた「販売台を回転させて、お客様が止まったままでもいろいろなお菓子が回ってくる売り場にしたら、今までにないおもしろい売り場になるのでは」というアイデアにより、回転機能のあるお菓子陳列什器を開発しました。