【橋本】 わかりやすいロックをしづらい雰囲気だったからこそ、こうなったんですね! 私が持つアイドル系ロックというイメージとは違っていて面白いです。
【中将】 アイドル個人の趣味嗜好が楽曲に反映されるような時代じゃないので、相当鬱屈(うっくつ)したロックみですね。その後の「危険なふたり」(1973)はオールディーズ風ロックンロールでわかりやすいアイドルロックなんですが、やっぱり売れたからどんどんロックできたという部分はあるでしょうね。
さて、お次に紹介するのは、西城秀樹さんの「情熱の嵐」(1973)。この曲は秀樹さん5枚目のシングルなんですが、これまでは平凡な青春ポップばかりでロックみは感じないんですよ。ところが「情熱の嵐」から急に唸るようなロックっぽい歌い方になって、サウンドもどんどん激しくなります。
【橋本】 西城さんはすごくわかりやすいアイドルロックですね! 西城さんと言えば「傷だらけのローラ」(1974)など、ずっとこの路線だったのかと思ってました!
【中将】 それが全然違うんですよね。ですが秀樹さんは小学4年の時にお兄さんとバンドを結成して以来、ドラマーとして活動していて、当時の洋楽ロックに影響を受けまくっているロック少年でした。5枚目でようやく周りのスタッフが西城さんの素養に気付いたということなのかもしれません。
【橋本】 もともと、バンドをやっておられたんですね。好きじゃなかったら、なかなかこういうシャウトはできないですもんね。
【中将】 新御三家といえば、秀樹さんと、郷ひろみさん、野口五郎さん。なかでも、五郎さんもかなりロック度の高い方です。その楽曲の1つが「真夏の夜の夢」(1979)。
【橋本】 野口さんは「私鉄沿線」(1975)みたいなフォーク演歌のイメージでしたが、ロックっぽい曲もカッコいいですね!
【中将】 五郎さんは音楽一家に生まれ、子どもの頃からビートルズにのめり込んでギターを弾いていました。キャバレーのバンドで演奏したりとかなり早熟な方だったんですが、デビューはなんと「博多みれん」(1971)という演歌。2枚目からはアイドル路線に軌道修正したんですが、なかなか表立って得意のギターを披露する機会に恵まれず、初めてギターを手に歌ったシングル曲は30枚目のこの「真夏の夜の夢」でした。
【橋本】 30枚目でようやく……! 芸能界ってつらいですね!