復元された菱垣廻船が展示されていた、「なにわの海の時空館」のガラスドームから、約1キロ離れた夢洲を望む。
今回、時空館の跡地に足を踏み入れたのは、ガラスドームの利活用を模索する目的だった。日本海事史学会の会員を中心に、兵庫県高砂市の発明家、工楽松右衛門の子孫、工楽隆造(くらく・りゅうぞう)氏をはじめ、日本遺産認定、「伊丹諸伯と灘の生一本、下り酒が生んだ銘醸地」の伊丹市から小西酒造株式会社、「最初の一滴」醤油醸造の発祥地、和歌山県・紀州湯浅などの関係者ら85名が館内を見学した。
ガラスから陽が差しこみ少し汗ばむ館内は、閉館から10年の歳月をしても開館当時を思わせるほど美しく保たれていた。
復元された千石船、菱垣廻船「浪華丸」は、木造船体の質感も変わらず新造時の状態とほとんど変わらない状態で保存されていた。
「なにわの海の時空館」は、2000年春、大阪市政100年記念事業として開業。「浪華丸」は、その前年(1999年)夏、大阪湾で実際に帆走実験も行った。性能を確かめ、多くの貴重なデータが収集された。 江戸時代の航路で立派に活躍したことが確かめられた和船だと証明された。
江戸期の経済を支えた弁才船の実物は一隻も存在しない中で、形状、構造、材料から工法に至るまで可能な限り忠実に復元された。
そして、試験航海でも弁才船の性能が明らかにされた、「ふね遺産第3号(復元船第1号)」に認定されている。
空から見れば、万博会場の玄関口に位置するかのように見えるガラスドーム。多くのインバウンド(訪日外国人)からは、日本の文化に興味を持っているという声が聞かれる。