関西が生んだ偉大な実業家・小林一三(1873~1957年)は、阪急電鉄をはじめとする阪急・東宝グループの創始者。今年(2023年)、生誕150年を迎えた。
小林一三(雅号・逸翁)による美術品コレクションを所蔵する阪急文化財団・逸翁美術館(大阪府池田市)では2023年度、生誕150周年を記念して、その功績を振り返る展覧会を、4回シリーズでロングラン開催する。第二弾は 「はっけん!小林一三と宝塚」展(〜2023年9月3日)。
鉄道を敷いて沿線を開発し、郊外の住宅に住み、百貨店でショッピングをして、演劇や映画を楽しむ……阪急沿線だけにとどまらぬライフスタイル「小林一三モデル」は、全国の大手私鉄や分割民営化後のJRにも多大な影響を与え、近代日本の人々の暮らしにうるおいを提供し続けている。
今回は、一三が手がけた沿線開発のシンボル「宝塚」にスポットライトをあてた。1911(明治44)年開業の温泉施設を皮切りに、現在の宝塚大劇場周辺には映画館、遊園地、動物園、植物園、図書館、球場、プール、レストランなどが次々と開設された。一三亡き後、1960(昭和35)年にはこれらを総合して「宝塚ファミリーランド」と命名された。そして、その中核だった宝塚歌劇は来年110周年を迎える。
阪急を創業、発展させていく一三とともに歩んだ道をたどる「はっけん!小林一三と宝塚」。
テーマは大きく分けて3つ。「文学青年小林一三」「宝塚歌劇の歴史」「レトロなファミリーランド」という切り口で、1910〜1950年代の宝塚を振り返る。当時のポスター、写真、映像、小林一三の自筆原稿や宝塚にゆかりのある品々を公開、最新の文献調査でわかった新発見や再発見も紹介する。
まず、文学青年としての一三。15歳で山梨から上京し、慶応義塾へ進む。同級生によると、級友と作文用紙に連載小説のような文章を書き、回覧雑誌を作っていたという。読むのも書くのも好きだった一三は、阪急という会社を経営し、事業を拡大する一方で、小説、随筆、脚本、評論など一生涯にわたり多くの著作を残した。宝塚歌劇はもちろん、阪急電鉄(当時の箕面有馬電気軌道)の広報兼文芸誌『山容水態(さんようすいたい)』や、宝塚歌劇の機関紙『歌劇』を刊行している。