《神戸・男子高校生殺害事件13年》父は語る「家族の力」知った刑事裁判、将太さんがつなぐ“絆” | ラジトピ ラジオ関西トピックス

《神戸・男子高校生殺害事件13年》父は語る「家族の力」知った刑事裁判、将太さんがつなぐ“絆”

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「裁判所は、被告に罪と向き合わせる場所。許す場ではない」。9月25日、大阪高裁でつぶやいた。

大阪高裁は9月25日、神戸5人殺傷事件の被告について、一審・神戸地裁の無罪判決を不服とした検察側の控訴を棄却した

 2010年10月4日夜、神戸市の路上で刺殺された当時16歳の少年・堤将太さんの父親、敏さんの言葉だ。2017年7月に神戸市で起きた無差別5人殺傷事件の控訴審で、一審に続いて無罪判決(検察側の控訴棄却)が言い渡された直後だった。大阪高裁は「妄想の影響下で心神喪失状態だった疑いが残る」と判断し、被告の刑事責任能力を否定した。

「コールドケース(未解決事件)」とされた将太さん殺害事件は、10年10か月後の2021年8月4日、急展開を迎えた。当時17歳の男(30)が殺人などの容疑で愛知県内で逮捕され、2023年6月23日、神戸地裁は男に懲役18年の実刑判決を言い渡した(男は控訴)。

亡くなった堤将太さん この約2か月後に事件に巻き込まれた <2010年8月撮影>

「将太が殺害された時もそう。この(5人殺傷)事件も、(現在、京都地裁で審理中の)京都アニメーション放火殺人事件も。加害者(犯人)の生い立ちや日常生活で、被害者が登場していたのか?」。将太さんが殺害された事件は、一審判決の事実認定で、男は以前から将太さんが知人女性と一緒にいるところを見て腹を立て、殺害を決意した。男と将太さんの間に面識もなく、直接の接点はなかったとされている。

将太さんの父・敏さん<2023年9月20日撮影>

 敏さんは、神戸5人殺傷事件の一審・神戸地裁の裁判員裁判、そして大阪高裁の控訴審判決も傍聴した。「遺族として、『いったい、うちの家族が何をしたのか』という怒りや悔しさを身に染みて感じている。他人事じゃない」。また、「長年の恨み(怨恨)が起因する事件とも異なり、相手(被害者の)人となりも知らずに殺めてしまう、その感覚が理解できない」と話す。

めったに訪れることはない事件現場「将太は確かにここに座って…」(※画像の一部を加工しています)

 刑事事件の判決などでよく用いられる「身勝手な犯行」という言葉。「一方的な感情」という表現もよく目にする。

 将太さん殺害事件をめぐる刑事裁判では、男は殺意を否定した。法廷で、一度も敏さんら遺族と目を合わせることはなかった。「将太さんの将来を奪ってしまった」という反省の弁を法廷で述べたが、いまだに遺族のもとには、正式な謝罪の言葉は届いていない。

 判決から4日目の控訴に、敏さんは「男は本当に弁護士と相談して、判決の内容を吟味していたのか?」との疑念がよぎる。「どんな判決が出たとしても、“控訴ありき”だったと思う」と話す。しかし、一審判決から3か月が過ぎた今でも、男からの「控訴趣意書(控訴する理由をまとめ、控訴審で争う内容を示した書面)」は提出されていないという。

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