最晩年の作とみられる「蕗図(ふきず)」(前期)は、初公開。太い茎と大きな葉を持つ蕗に絵具を塗り、紙に押しつけ、葉脈など細部まで写し取った上で、作者が多数のアリを加筆したものだ。アリの体の各部位、触覚まで緻密に描写されている点が目を引く。
さらに細かな筆遣いは、「方寸五百羅漢図」(前期)で見ることができる。わずか一寸(約3センチ)四方の紙に白い象に乗る釈迦、その周囲に約500人の羅漢がひしめき、極小の画面に込められた描き手のエネルギーに圧倒される。
展示を監修した河野元昭・東京大学名誉教授は「芦雪はネコをトラに見立て、トラでなくネコを描こうとした。それが芦雪の『奇想』。芦雪には、人を驚かせようという、心に響くリアリズムがある。師であった応挙の写生主義から一歩はみ出し、本当の意味でのリアリティーを求めた。彼の作品の中にはそれが通奏低音(=物事の底流で影響を与え続けている)のように流れている」と話した。
問い合わせは大阪市総合コールセンター(なにわコール)、電話06-4301-7285。
◆「特別展 生誕270年 長沢芦雪―奇想の旅、天才絵師の全貌―」
会場 大阪中之島美術館(〒530-0005 大阪市北区中之島4-3-1)
会期 2023年10月7日(土)~12月3日(日)
[主な展示替え]前期10月7日(土)~11月5日(日)/後期11月7日(火)~12月3日(日)
開館時間 10:00~17:00(入場は16:30まで)
休館日 月曜
観覧料(税込) 一般1800円、高大生1100円、小中生500円
問い合わせ 大阪市総合コールセンター(なにわコール)06-4301-7285
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