突然ですが、「ズック」という言葉をご存じでしょうか。地域によっては、今も鉄道の駅のエスカレーターの注意アナウンスで耳にすることがあるものの、今となってはその意味を知らない人も多いのかもしれません。
一般的にズックとは、皆さんも学生時代に履いていたであろう「上履き」を指すのですが、謎めいているのはその呼び方です。そもそも何語なのでしょう。そこで「ズック」の謎を解明するため、学校用シューズを取り扱うラッキーベル株式会社(兵庫県神戸市)の伊藤さんと、石川県金沢市で学校用シューズを販売する株式会社山善の山本さんに話を聞きました。
―――「ズック」という呼び名は、いつごろ使われていた?
【伊藤さん】 1970年前後までは、全国的に使われていたと思います。ただ、当時は上履きだけでなく、布製の運動靴を総称して「ズック」と呼んでいたようです。今でいう、「スニーカー」のような使われ方でしょうか。どちらかというと、安価な運動靴を指す際に使われていた印象があります。
そこから徐々に「上履き」のみを指す言葉として変化していくと同時に全国的に使用されることはなくなり、現在は東北や北陸方面で使用されていると聞いています。
【山本さん】 北陸3県では、今でも「ズック」と呼んでいます。実は、今回の取材で初めて他県では呼ばれていないことを知りました(笑)。それほど、北陸では当たり前の呼び方なんです。
ちなみに金沢市内の学校では、学校から配布される手紙などでも当然のように使われています。さらに、金沢では「靴のかかとを踏んで履くこと」を「ズッパ(ズックをスリッパのように履いていることから)」と呼ぶ方言もあるほどです。
―――そもそも、どこから来た言葉なのでしょうか?
【伊藤さん】 一説によると、オランダ語の「麻布」「綿布」を指す「doek」という言葉から来ているといわれています。そのため、当時は綿布でできた製品を「ズック袋」「ズック靴」と呼んでいました。そこから「靴」としての呼び名だけが定着し、「ズック」と呼ばれるようになったと思われます。