これをきっかけに、8月中旬、大阪市内の百貨店で復刻版のパインアメ缶を限定(3000個)を販売したところ、SNSで瞬く間に情報が拡散、あっという間に完売したというのだ。当初、社内では「そんなものが売れるのか」と議論になったという。
しかし、見事なまでに売れた。井守さんは、「5日間限定での催事。各日分散して販売したが、開店前に(販売数量を確認するための)整理券をお配りした時点で、その日ご用意した商品が足りないとわかる、そのような状態で申し訳なかったです」と振り返る。
■復活した「パインアメの日」
8月8日、輪切りのパイナップルをモチーフにしていることから、輪(◎)の形が4つそろうこの日を「パインアメの日」とした。2015年にスタートし、この年に日本記念日協会に登録されたほど。新型コロナウイルスが5類扱いになった今年(2023年)、4年ぶりに大阪・難波でリアルイベントとして、フィンランド発祥の人気スポーツ「モルック」の大会を開催、大いに盛り上がった。
2011年からコラボレーション商品も展開、約80アイテムにのぼる。同業他社とのコラボは難しいのでは、と思いきや、意外にお互いを補完しあって作り上げることができたという。例えばパインアメと輪っかの形が似ている「フエラムネ(コリス株式会社 / 本社・大阪市東淀川区)」とのコラボがそうだ。
井守さんはかつて、X(旧・ツイッター)で「パインアメは吹いても鳴らないですよ!」とあえて発信したことがある。このコメントをツイートした2012年、「えっ、そうだったの?てっきり(笛と同じように)鳴ると思っていたのに…」と、SNS上で大きな話題になったという。これがきっかけで、2014年にフエラムネの限定品「パインアメ」バージョンが生まれた。
■止められそうなら、いつでも止められる?
SNSの力。実は井守さん、たった独りで2010年にパイン株式会社としてツイッター(当時)を始めていた。あくまでも一部のユーザー間で盛り上がる程度だったこの時期、社内でもツイッター自体が何物か理解している社員が1人もおらず、井守さん自身が大量のレポートを書いて社内で説得して回ったが、あまりにもツイッターが認知されなさ過ぎて、「勝手にやってみたら? 経費もかからなそうだし、止めたかったらいつでも止められるんだろ?」という結論に至ったと笑う。
それ以来、井守さんは1人でコツコツ、ツイートにいそしんだ。もとは受付や、事務職として請求書の発行や商品の受注をしていただけなのに、「中の人(特定のキャラクターで広報のSNS部門を担当)」として発信する重要なポジションに。その後、2018年に広報室ができた。
パインアメとのコラボ商品を世に出す時は、あくまでも監修の立場。味と香りには細心の注意を払う。そして、コラボ先が自社商品として販売するが、この販路が、パイン株式会社としてたどり着けないルートの場合(例えば食品以外の衛生用品など)、店頭に並んだ際に非常に大きな宣伝効果になるという。「これ、押しつけがましくないんですよ」と井守さんは話す。