民放テレビがカラー化される以前、コマーシャルを放映した時期もあった。小さな新聞広告も出したことはある。しかし、メーカーにとっての課題は、「いかに商品名を訴求できるか」。ここが広報担当者の腕の見せどころ。まったく何もしなくて売れるならば、誰も苦労しない、でも広告予算は限られている……それが業界内で「パインアメとコラボすれば売れる」とまで言わしめたのだ。
「パインアメの日」も、当初はSNS上で行脚するようなキャンペーンだったが、しだいにイベント化するようになった。
記念日を作ると大きい。各社からの賛同を得られやすいし、見た目も愛らしい”輪っか”と目につきやすい”イエロー”。ほかに形状が似ている商品があるかと言えば……実は見当たらない。
「創業時から、少しづつ味は改良を重ねています。リフレッシュできるパインの味、そして1粒では物足りないからもう1粒、というような味にしています。甘すぎても、酸っぱすぎても、辛味が強すぎてもいけない。どこまでも甘酸っぱいからいいんです。甘酸っぱすぎるということはないでしょう」。
岡田監督が試合中に7~8個食べるのもうなづける。甘酸っぱさは、裏切らない。
失敗しないやり方を確実に進める。イベントを終えると、そこで生まれた問題点や改善点を徹底的に分析、商品開発や商品管理に関しても、食品会社の使命として、同じように厳格に進めるという。
食の安全が問われた1990年代後半から2000年代、あるアクシデントで全商品回収という事態となり、半年間売り上げがゼロという危機も経験した。そうした時代を乗り越えて2023年。「パインアメ」は急に突っ走ったかのように見えるが、実は長きにわたり培った地道な仕事と、商品への思いがあった。
「弊社は石橋をたたいて渡るんです。でもチャレンジに対してはバックアップしてもらえます」。そこに”70年ぶりの里帰り”と、勝ち馬ならぬ“勝ち虎の一言”が後押し。過去最高益を記録する日が訪れるのも夢じゃない。