【中将】 (笑)。次に紹介するのは、美空ひばりさんが歌った『さくらさくら』(1961)。
【橋本】 歌唱力はもちろんですが、アレンジもすごいですね。めっちゃジャズ!
【中将】 ひばりさんはもともとジャズ畑出身なので、そういう感性を古典にぶつけてみたんでしょうね。『さくらさくら』は江戸時代に子どもの箏(こと)の手ほどき曲として作られたそうで、作者不明。歌詞ももともとは、今、知られているものとは全然違ったそうです。そんな古い曲が時代ごとにアレンジを加えて歌い継がれているって、すごいことですよね。
【橋本】 これからもそういう歴史が続いていけば素敵ですよね。
【中将】 童謡、唱歌のボカロバージョンとか作ってもいいと思うんですよ。ひばりさんの『さくらさくら』みたいに、数十年後に振り返れば面白い歴史的音源になってるかもです。さて、今回紹介する曲は次で最後になります。ダーク・ダックスで『故郷』(1979)。
【橋本】 いやぁ、今日はすごくいい番組ですよ(笑)。お父さんお母さんに会いたくなってきました……。
【中将】 大人の教養番組ですからね(笑)。この曲は1914年、尋常小学唱歌の「第六学年用(第5曲)」として発表されました。作詞を手がけた高野辰之の出身地、長野県中野市中野市豊田地区の風景を歌ったものだそうです。先に紹介した『小さい秋』は兵庫県たつの市の風景でしたが、共通するものを感じますね。
【橋本】 今、野ウサギさんをほとんど見ることがないのに、それでも風景が懐かしく浮かんでくるのが不思議ですね。歌の魅力ですね。
【中将】 三番の「こころざしをはたして いつの日にか帰らん」というフレーズもなんだかシビれます。唱歌って明治政府が音楽教育のために普及させたものなのですが、国を挙げての事業だったので、詞からも曲からも作り手の意気込みをひしひしと感じます。また西洋音楽を大衆に広めたという点で、現代のポップスの基礎になったとも言えると思います。
【橋本】 今回、聴かせていただいて改めていい曲が多いと感じました。童謡、唱歌、これからも大事にしていきたいですね。
(※ラジオ関西『中将タカノリ・橋本菜津美の昭和卍パラダイス』2023年12月1日放送回より)