さらに建造物や施設の「その後」も気になるらしい。改造されたり、移設されたりしたものがどんな歴史をたどったのかを丹念に検証している。
1951(昭和26)年に開園した王子動物園の前身は、関西学院のキャンパスだったと思ってる人が多いが、実はその前は護国神社だったという。関学は1929(昭和4)年に西宮に移転したが、そのあと戦時中のわずか4年間(空襲で焼失)だけ、この地に戦没者を祀る護国神社が鎮座していたらしい。その痕跡は動物園西側に瓦塀として残っていた。さらに調査を進めると、ここはもともと鎌倉時代あたりから原田神社だったというのだ。神社のあったところにキリスト教系の関西学院がキャンパスを建て、その後は護国神社になって、いま動物園という歴史の変遷には驚きを隠しえない。
神社は再開発されずに現存率が高く、戦前は国の管理下におかれていたことからも数多くの歴史的遺産に出会えると著者はいう。ほかにも神戸最古の現存駅舎・湊川や、水族館の変遷、別府は神戸とまちのつくりがそっくり、三宮フラワーロードの前身は(?)……などへの調査・見解はなかなか興味深い。
近代遺跡の街歩きガイドとしても活用できるこの本は、神戸新聞の第3月曜夕刊に連載中の「四ツ目が通る~兵庫はみだし近代考~」を加筆修正したもの。膨大なコレクションからの貴重な写真や絵ハガキも数多く掲載されている。ちなみに著者に興味を持った方は、氏が経営するJR神戸駅近く高架沿いの古本屋「四ツ目屋」にも足を運んでみると、また新たな発見に出会えるかもしれない。(羽川英樹)
「神戸はみだし近代歴史めぐり 写真で見るサブカル郷土史」
著者 佐々木孝昌
刊 神戸新聞総合出版センター
ISBNコード:9784343012296
発行日:2024年4月
価格 2200円