神戸市北区の路上で2010年10月、堤将太さん(当時16歳・高校2年)が殺害された事件で、殺人罪に問われた元少年(31・事件当時17歳、記事中では「男」と表記)とその両親を相手に、遺族が約1億5000万円の損害賠償を求め、神戸地裁に提訴した。提訴は2024年3月1日。
10日、神戸地裁で非公開で弁論準備手続きが進められた。
男と両親は、具体的な争点を示さず、答弁書の内容の一部を留保したという。
男は2010年10月4日夜、神戸市北区筑紫が丘の路上で、堤さんを折り畳み式ナイフで突き刺すなどして殺害した。10年10か月後の2021年8月4日に逮捕され、翌22年1月に殺人罪で起訴された。神戸地裁で開かれた裁判員裁判で男は「(将太さんに対する)殺意はなかった」として、起訴状の内容を否認し、弁護側は善悪の判断が著しく低下する「心神耗弱」状態だったとして刑の減軽を求めていた。
神戸地裁は、精神障害はないと断定、完全責任能力を認めて懲役18年の判決を言い渡したが、男はこれを不服として控訴している。
将太さん殺害事件をめぐる刑事裁判で、男は殺意を否定した。法廷で、一度も遺族と目を合わせることはなかった。法廷では「将太さんの将来を奪ってしまった」と述べたが、いまだに遺族のもとには、正式な謝罪の言葉は届いていない。
将太さんの父親・敏さんは「(男が)犯行後、神戸から姿をくらましたのは、発覚を遅らせようとしていたのではないか。両親も“逃亡を手助け”していた可能性が高く、監督責任も問われるべき。犯行動機が明確ではなく、なぜ逃亡したのかも知りたい。遺族としての思いは、賠償金ではなく、責任の所在をはっきりさせること。私たちは絶対に1ミリも引かない。あきらめない」と話した。
遺族代理人によると、第1回口頭弁論は8月下旬に予定されている。今後、訴状の内容を改めて精査し、争点を明確にするという。