6月21日は夏至でした。夏至から数えて11日目(今年は明日7月1日)からの5日間は、季節の移り変わりの目安となる“雑節”の一つ「半夏生(はんげしょう)」です。雑節には決まった食べ物を口にする慣習や習慣も多く、節分には恵方巻、土用の丑の日には鰻を食べると良いとされています。半夏生はどうなのでしょうか。
近畿地方では、半夏生にタコを食べる風習があります。地域にもよりますが、一説によると、八本足で吸盤もあるタコにあやかって「植えた稲の苗がしっかりと根付くように」と、神に供えたことに由来しているのだとか。
また、タコに多く含まれる成分「タウリン」には疲労回復効果があるとされています。暑い夏を健やかに過ごすため、この時期にタコを食べるのは理にかなっているのですね。
となると、半夏生には新鮮でおいしいタコが食べたいところ。この時期は、兵庫県・明石の特産品として名高い「明石だこ」が旬を迎えています。明石の海は栄養が豊富。加えて、潮流が速く、海底に岩場が多いことも相まって脚の立派なたこが多く、店を飛び出し、商店街を歩いて逃げ出すと言われるほどイキが良いことが知られています。
この時期明石では、多くの鮮魚店が軒を連ねる「魚の棚商店街」や地元のスーパーマーケットなどに明石だこが並ぶほか、地元の観光協会が運営するオンラインショップでも、たこ関連商品が約50種類も取り扱われています。
一匹丸々茹で上げた迫力満点の「釜揚げ明石だこ」や、柔らかく煮込まれたタコに山椒のアクセントが効いた「蛸の有馬煮」、揚げたての明石だこ入り天ぷらを自宅で楽しめる天ぷらセットなどが打ち出されています。
地元の漁業協同組合によると、明石だこの漁獲量は近年減少傾向にあるとのこと。それだけに、尊い海の恵みと言えます。
今年の夏も猛暑が予想されています。海への感謝を胸に、厳しい熱さへの備えとして英気を養うべく、明石だこを食卓に取り入れてみるのも良さそうです。
※ラジオ関西『谷五郎の笑って暮らそう』より
(取材・文=洲崎春花)