極上の広重ワールドを旅しよう。日本を代表する浮世絵師の1人、歌川広重(1797~1858年)の初期から晩年までの画業をたどる大規模な展覧会「広重 ―摺(すり)の極(きわみ)―」があべのハルカス美術館(大阪市阿倍野区)で開かれている。「東海道五拾三次(保永堂版)」「本朝名所」など風景画の代表作をメインに、花鳥画や美人画、絵入りの封筒や便せん、うちわ絵など、多種多様な作品計約330点(会期中、入れ替えあり)を公開。
今展の特徴は、版画の摺り、保存状態ともに極めて良い作品が集められている点。内容も、三大揃物とされる「東海道五拾三次(保永堂版)」、「木曾海道六拾九次」、「名所江戸百景」から各シリーズの代表作、そのほか人気の揃物「本朝名所」、「東都名所(一幽斎がき)」、「近江八景」、「京都名所」、「浪花名所図会」、「江戸近郊八景」、「東都八景 (扇面)」の全作品を前期または後期にそれぞれ展示するという、豪華なラインアップだ。ビビッドな風景画は、見る者を江戸時代の名所巡りに力強くいざなう。
後半では、短冊形の花鳥画や広重作品としては数少ない美人画などが並ぶ。滑稽本「東海道中膝栗毛」を題材にした戯画風の「道中膝栗毛」や浄瑠璃をモチーフにしたパロディー作品などは、広重のユーモアセンスとともに当時の風俗も分かり、興味深い。絵があしらわれた便せん「絵半切」や絵封筒、うちわ絵も数多く紹介、見どころの1つとなっている。
展示作品の約8割がフランス在住の美術コレクター、ジョルジュ・レスコヴィッチさんからの貸与。内覧会に出席したレスコヴィッチさんは「広重は私にとって特別。私が所蔵する広重作品の展覧会が日本で開催されるのは夢のような話。会場に入り、胸がいっぱいになりました」と、日本語でスピーチした。