犯人逮捕までの10年10か月間、敏さんら遺族は訴えかけた。それは、逃亡していた男に「どうか自首してくれ」ではなく、「必ず捕まえる。必ず見つけ出す」。
年々、言葉に重みが増す。冒頭の講演の一節は、「私が素直に感じたことを、ストレートに伝えているだけ」と話す。
敏さんら遺族は、男とその両親を相手に約1億5000万円の損害賠償を求めて神戸地裁に提訴、すでに第1回口頭弁論を終えた。
その後、この民事裁判は法廷ではなく、ウェブ会議という形式を取るが、男と両親は、具体的な争点を示さず、答弁書の内容の一部を留保したという。男は出廷しなかった。
「被告が反論したいのなら、堂々と法廷で主張すればいい。私たち遺族は、1ミリも引かないのだから」。敏さんは怒りを抑えられない。いったい誰が悪いのか、しっかり公開の場で示してほしいと訴える。
事件から10年10か月経っての逮捕、兵庫県警での取り調べでは、男が本人しかわからない、具体的な経緯を説明していたという。しかし、刑事裁判では一転、「覚えていない」という供述に変わった。
敏さんら遺族を苦しめていく。「これでは真実がわからない」。
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2023年9月25日、敏さんは大阪高裁の法廷で、ある判決公判を傍聴していた。
2017年7月に神戸市で起きた無差別5人殺傷事件の控訴審で、一審に続いて無罪判決(検察側の控訴棄却)が言い渡された。
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