大阪高裁は「妄想の影響下で心神喪失状態だった疑いが残る」と判断し、被告の刑事責任能力を否定した。
敏さんはこの時、「裁判は、被告を罰する場なのか、被告を許す場なのか、遺族はやり切れないはず」と声を震わせた。
将太さん殺害事件をめぐっては、男の一審判決は、懲役18年(求刑・懲役20年)。
遺族代理人の河瀬真弁護士は、司法に携わる立場として、法に則った結論を下す部分と、遺族の悲痛な思いに接するはざまで、もどかしさをぬぐえない。「18年という刑罰が、将太さんの死という重大な結果を少しでも償うことができる期間なのか。決してそうではない。ただ単に犯行時が少年だから、未熟だから、という理由でむげに刑が減軽されることがなかったのは、ひとつの成果だったと思う」と振り返る。
敏さんは「刑罰で納得する遺族はいない。そこで何があったのかを明らかにすることが、残された私たちに課せられた役割だ」と話す。
犯罪被害者と遺族を取り巻く環境は厳しい。特に精神的苦痛が襲い掛かり、苦しめる。
毎年、命日は家族だけで迎える。しかしこの日、将太さんを偲ぶ友人、長く携わった捜査員らのメッセージを聞くたび、敏さんは「将太はある意味、幸せ者かも知れない」と感じるようになった。
敏さんは今、犯罪被害者とその遺族という、世間にほんの一握りの存在を知ってもらいたいと強く願い、前を向く。「私は遺族として、絶対にこの事件を忘れない。事件を忘れることは、将太を忘れることになる。もう帰ってこない将太、必ず真実を突き詰めるから」。
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