こうして伝統ある「漬け替え製法」を守り伝えている。冬の寒さでかぶらの甘みが増すため、京都特有の底冷えが始まる立冬前後に漬け込まれた千枚漬が、最も美味しいという。歳暮や迎春準備に向けた12月までが最盛期。シャキッとした食感と、なめらかな舌触りが特徴。
■デリケートな”聖護院かぶら” 農家の努力、実を結ぶ
大安の大⻆安史・三代目社長は、ラジオ関西の取材に対し、「今年も猛暑の影響で、かぶらが育ちにくかったが、昨年に比べて雨量が増えたぶん、最悪の状態は免れた。かぶらは発芽から70〜90日で生育するが、カンカン照りでは、すぐに溶けて(しおれて)しまう。雨が降らなければ発芽しない。もろに収穫量に影響が出る。かぶらの産地の出始めは、まず北海道の寒冷地、そして富山、最盛期に京都の丹波地方(京都府亀岡市)と移るが、いずれも気温が上がり、生育時期の差がなくなってしまったが、契約農家の皆さんの努力でここまできた。そして今、秋らしく気温も下がり、甘みを増した美味しいかぶらになった」と振り返る。
■「腸活」に”tsukemono(漬物)”、発酵食品の魅力
そして、「『季節のものを食す』という日本人のアイデンティティを大切にしたい。漬物は先人の知恵が詰まったスーパーフード。いま注目されている『腸活』も、乳酸発酵食品である漬物が見直されるきっかけになった」と話す。
大⻆社長はまた、「海外の方々に、酒(Sake)と同じく、漬 物(Tsukemono)として認知度を上げたい。海外ではまだ、“ピクルス(Pickles)”としてしか知られていない。京漬物の魅力を伝えるためにも、今年も冬の千枚漬をお届けしたい」と話した。