記録的な猛暑によるニワトリの産卵数の減少や鳥インフルエンザの拡大により、卵価格の高騰が懸念されている。さらに、カカオの世界的な不足によるチョコレート価格の大幅な上昇、国産業務用バターの販売制限なども重なり、ケーキの値段が上がっている。
兵庫県神戸市に店を構える洋菓子店では、試行錯誤を経て新たに「クロワッサン」の販売に乗り出した。
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スイーツ仕様のクロワッサンに商機を見出すのは「パティスリー アンクレール」(同市西区)。2023年12月で開店から丸30年を迎えた同店のショーケースには、季節ごとに変わるケーキが20種類ほど並ぶ。
オーナーの牛尾嘉之さんはケーキを作るにあたって、生クリームにこだわってきたという。北海道産と九州産を独自にブレンド。「後味のキレのいい生クリームで、30年間一度も変更せずに使っています」と牛尾さん。カスタードクリーム作りでも、卵、牛乳、自家製の天然のバニラビーンズ入りなどを合わせる際に生クリームを用いるが、このこだわりの生クリームを加えるからこそ、コクがありつつもあっさりとした味が生み出されるのだそう。
ところが、おいしい洋菓子を届けたい思いに原材料価格の上昇が黄色信号を灯した。同店でも各商品を値上げせざるを得なくなり、思案の末、ケーキは500円台半ばからの価格設定を選択した。比較的手ごろ感のあるシュークリームは、ナッツを使用し300円台で販売している。
そのような状況の中、手の届きやすい200円台の商品を少しでも手厚く提供したいと模索して行きついたのが「クロワッサン」だった。従来のシュークリームのシンプル版も検討したが、ケーキ店では珍しい商品を繰り出すことで地域の人々に喜んでもらい、足を運んでほしいとの願いから決めた。
誕生したのは、自慢のカスタードクリームをクロワッサンに挟み込んだ「クリームクロワッサン」。まずは1か月間、240円でテスト販売を行ったところ、訪れる客に好評だったことからレギュラー販売を決めた。寄る値上げラッシュにより今月2日からやむなく250円で販売することとしたが、できる限り“抑えた価格”を維持する姿勢は失わない。