白鹿記念酒造博物館の大浦和也学芸員によると、「山廃酛」は、生酛造りで2日目に行う、米と水と麹を櫂(かい)ですりつぶす“山卸作業”を、腐造率の高さから取り止めた経緯があるという。山卸を廃止で「山廃」。
また「速醸酛」は、人工的につくられた乳酸を直接添加して酒母を育成する方法。
乳酸を添加して、酒母を酸性に保ち、雑菌や微生物の増殖を防ぐ。その結果、安定した環境で酵母を増やすことができ、効率的な酒造りが可能になる。
現在造られている日本酒の約90%が、速醸で造られたと言われている。
灘五郷を擁する兵庫県は清酒の生産量日本一を誇る酒どころ。今回の登録をきっかけに、海外輸出や国内消費の拡大に期待が寄せられている。
■麹〜国菌と言われるだけのことはある
辰馬本家酒造の辰馬健仁会長(酒ミュージアム理事長)はラジオ関西の取材に対し、「麹がないことには酒造りは始まらない。大陸から日本に伝わった麹の文化が、何百年もかけて、創意工夫で麹と食文化を育ててきた。麹を使った食品の充実度をみるに、『国菌』と言われるだけのことはある。
こうした技術を引き継ぐ側と引き継がれる側があって伝承が成り立つ。酒造りの技術が認められ、日本文化を世界に知らしめる絶好の機会だ」と語った。
同社は現在32カ国に商品を輸出中で「海外シェアは今後も拡大する可能性が高く、ビッグニュースとして国内でも改めて日本酒の良さを知るきっかけになれば」としている。
<酒資料室展示 伝統的酒造りの近現代>