【橋本】 なるほど! 現代的な考え方で音楽に革命を起こしたんですね。
【中将】 次に紹介するのは、白人側のロックンロールの代表、エルヴィス・プレスリーの『ハートブレイク・ホテル』(1956)
【橋本】 ロック界のスター中のスターというイメージです!
【中将】 今でこそ音楽をやっている人なら知らない人はいないだろうというくらいの存在ですが、この曲がラジオで流れ始めた当時は「黒人が歌ってるのか?」と勘違いする人もいたそうです。当時の白人歌手はもっとスマートにジェントルに歌うのが主流だったので、白人なのにこういう歌い方をするのはすごく斬新だったんですね。
【橋本】 太い声でシャウトする感じで、激しいですもんね。こうやってロックの歴史を振り返るのって面白いですね!
【中将】 そうですね。チャック・ベリーもプレスリーも約70年前の音楽なのに、今でもハートに刺さる部分があると思っています。
さて、このようにアメリカで生まれたロックンロールですが、すぐに日本でもブームを巻き起こします。おそらく一番早く反応したミュージシャンの一人がカントリー歌手だった小坂一也さん。プレスリーのわずか半年後に『ハートブレイク・ホテル』を『ハートブレーク・ホテル』(1956)としてカバーしています。
【橋本】 いいですねぇ……でもなんでちょっとコミカルに感じてしまうんでしょう(笑)。今でも海外の方に比べると日本人って感情控えめで奥ゆかしい気がしますが……。
【中将】 ロックンロールの激しさやセクシーさはどこかに置いてきちゃったみたいな(笑)。こんなに早くしっかりカバーされていること自体はすごいんだけどね。
ちなみに当時、日本ではあまり知名度がなかったのか、小坂さんのレコードジャケットには「プレスリー」が「プレスクー」と誤植されてしまっています……。
【橋本】 かわいい(笑)。
【中将】 ともあれこれ以降、日本でもプレスリー人気は高まり、ロックンロールも浸透していきます。
だけど、その中で当時の日本人は大きな勘違いをします。そもそもロックンロールの白人寄りのいちジャンルである「ロカビリー」という言葉を、すべてのロックンロールに当てはめてしまうんですね。「黒人も白人も、ロックじゃないポップスも全部ロカビリーだ」と。
次に紹介する、山下敬二郎さんの『ダイアナ』(1958)も、日本ではロカビリーの代名詞のように言われていますが、実は音楽的にはロカビリーでもロックンロールでもないという……。