20世紀前半、パリには世界各地から芸術家が集まった。「エコール・ド・パリ」と呼ばれる彼らの代表的存在であるローランサン、藤田嗣治らの名品を集めた展覧会「エコール・ド・パリ展」が山王美術館(大阪市中央区)で開かれている。近年、同館に収蔵された絵画13点を初公開、画家同士の交流にもスポットを当てた構成となっている。7月31日(木)まで。

「エコール―」の芸術家の多くは、パリ・モンパルナスにあった「ラ・リューシュ(蜂の巣)」、モンマルトルの「バトー・ラヴォワール(洗濯船)」などアトリエ付きの集合住宅に居住。互いに刺激を与え合い、交流を深めながら制作に励んだ。その活動は1920年代に最盛期を迎えたが、第2次世界大戦によって実質的に終わった。
展示作品は、すべて同館が持つコレクション。ローランサン、ユトリロ、モディリアーニ、パスキン、藤田嗣治、キスリングの6人による絵画約30点を紹介している。

初展示の13点のうち、ローランサンは5点と最多。とくに目を引くのは「真珠で装うエヴァリン」(1936年)。真珠と花で顔まわりを飾った女性は、丸みを帯びた乳白色の身体に色鮮やかな1枚の布だけをまとう。やわらかな印象の画面の中で、女性の自信に満ちた表情が際立つ。
一方、モディリアーニの「ほくろのある女性」(1906-1907年頃、初展示)は、正面を見据えたモデル女性のまなざしに強い意志が宿る。暗めの色調をベースとしながら気高い表情を表現、一般的に思い浮かぶモディリアーニ作品とは異なる画風であるのが印象的だ。


藤田嗣治「二人の女性と船員」(1932年、同)では、踊り子を思わせる衣装を着けた女性2人がそれぞれポーズを取る。ターコイズブルー、濃密な赤などビビッドな色彩が目立ち、タイトルの「船員」が、後ろの壁に貼られた小さな絵の中の男性を指している点が面白い。
それぞれの個性を追求しながら芸術活動に勤しんだ若いアーティストたちだが、いくつかの作品キャプションからは、その明るいイメージとは裏腹に、絶望や孤独を抱えた画家たちの内面をうかがうことができる。