
たとえばキスリング。陽気な彼のアトリエは、画家や詩人などが集う場になっていた。モディリアーニとはとくに親しく、毎日一緒に絵を描き、友が望むままに絵具も提供した。モディリアーニが他界した際には、何枚もの肖像をデッサンし、デスマスクを制作、葬儀費用も負担したという。面倒見が良く、広く慕われたキスリングだったが、「アメリカでは僕はポーランド人画家と言われている。ポーランドでは僕はユダヤ人だし、ユダヤ人から見ればフランス人画家だ。ところがフランス人から見れば僕ははよそ者という具合だ」(友人に宛てた手紙)という意識を持っていたようだ。

日本人画家、藤田嗣治も「日本に生れて祖国に愛されず、又フランスに帰化してもフランス人として待遇も受けず(中略)迷路の中に一生を終る薄命画家だった」と孤独感を吐露していたという。彼らに共通する異邦人としての感覚も、互いを結ぶ絆となっていたのかもしれない。
展示を担当した亀井里香学芸員は「『エコール・ド・パリ』と耳にして具体的なイメージは湧きにくいと思うが、今回は、日本でも人気の高い画家たちの作品で構成されているので、ふだん美術館に行かない人も足を運びやすいのでは。会場で好きな作品や推しポイントを見つけて、画家たちが切磋琢磨した時代があったことを実感してほしい」と話した。
◆「山王美術館コレクションでつづる エコール・ド・パリ展」
会場 山王美術館(〒540-0001 大阪市中央区城見2丁目2-27)
会期 2025年3月1日(土)~7月31日(木)
開館時間 10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日 火・水曜(4月29日、5月6日は開館)
入館料 一般1300円、高大生800円、中学生以下500円(保護者同伴に限り2人まで無料)
問い合わせ 電話06-6942-1117
【山王美術館 公式サイト】