“港町”や“オシャレ”というイメージが強い神戸市ですが、北区や西区では野菜やフルーツが豊富に栽培されており、農業が盛んに行われているという一面も。5月末からは地元の農家とまちの食卓をつなぐための「KOBEベジバス」という取り組みが本格始動したそうです。都市型菜園事業「そらばたけ」代表・倉内敏章さんと「C-farm合同会社」代表・稲垣将幸さんに詳しく聞きました。
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まずは、2人が農業に興味を持ったきっかけについて紐解きます。
倉内さんは以前から、神戸市が推進する「食都神戸」の理念に共感しており、東遊園地で開催されているファーマーズマーケットに息子と訪れることが楽しみだったそう。転機となったのは、神戸ベイシェラトン ホテル&タワーズの北側にある商業施設屋上の都市農園「シェラトンファーム」に訪れたことでした。「最初は乗り気ではなかった息子が、徐々に野菜の成長を自ら観察するようになったんです。その時に“都市の中にこうした学びの場がもっとあっても良いのでは”と感じました」と倉内さんは振り返り、「収穫した大根2本を譲渡し、代わりにピーマンをもらうといった“お金じゃないやりとり”にも心地よさを感じ、2022年5月に都市型菜園事業『そらばたけ』を開業しました」と語りました。

稲垣さんは、“元プロ野球選手”という異色の経歴の持ち主。現役時代から地域の農家を手伝うために畑へ出入りしていたのだとか。その際、高齢化などによる農業の衰退を肌で感じたそうです。「アスリートは体力や筋力があるので、農業の世界に入れば何か取り組めることがあるのではないか」と考え、C-farm合同会社を設立。西区でカフェを経営しつつ、有機栽培で野菜を生産しています。

そんな2人と神姫バスが一丸となり、立ち上がったのが「KOBEベジバス」プロジェクトです。「地産地消」「貨客混載」「環境負荷低減」を目的とし、5月末から本格運用されています。
C-farm合同会社で育てられた旬の野菜を出荷日の朝に収穫。神姫バスの中距離高速路線バスを活用し、スーツケースなどを入れる荷物スペースに野菜を乗せて三宮方面へ向かいます。バス停でそれらを倉内さんがピックアップし、野菜セットを完成させた後、三宮バスターミナル・PORTO・神戸イングリッシュアカデミーなどのピックアップステーションに自転車で届け、客に購入してもらう……というのが一連の流れです。

本格始動にあたり苦戦したのは、内容と量の調整。「昨年の夏の雨の少なさや、秋に襲来した台風の影響で、野菜の生育が計画通りにいきませんでした。結果、10種類の野菜セットのはずがジャガイモが多く入ったりするなど組み合わせに偏りが出てしまいました」(倉内さん)そのため、C-farmだけでは野菜が足りない場合は協力農家から仕入れる仕組みを作るなどして、バラエティ豊かな内容になるように工夫しているそうです。
反響も続々と届いているそうで「黄色いズッキーニを見て驚かれているお客さんもいました。まだまだ知られていない野菜がたくさんあるんだなと感じたとともに、これからも、珍しい種類や旬の品々を仕入れることが出来ればと思います。地域を応援するという意味で、ベジバスを通じて味わってもらいたいです」と稲垣さんは話しました。
今後、都市部で食や農に興味を持つ人を増やしたいと考える倉内さん。最後に、「『KOBEベジバス』という新たなプロジェクトを通じて、ちょっとワクワクする野菜との出会いを、ぜひ体験してみませんか?」とメッセージを送りました。
(取材・文=長塚花佳)
※ラジオ関西『Clip』水曜日 2025年7月2日放送回より





