フランスの生活に根付く「バゲット」。日本のパン屋でもお馴染みですが、本場ではバゲットにまつわる“アレコレ”があるとか。「アルーチパン教室」(神奈川県横浜市)を運営する岡本智美さんに話を聞きました。
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世界には「パン作りに関する独自の法律」を持つ国が存在しており、なかでもフランスでは、過去にいくつもの法律が発令されてきたとか。
最も有名とされているのが、1993年に発令された通称・パン令。「原材料は小麦粉・水・塩・酵母のみを使用すること」「製造過程で添加物などを使用をしたり、生地を冷凍したりすることは禁止」「販売する店舗内でのみ、生地の作成から焼成まで行うこと。他の製造場所で作ったパンを販売するのはNG」などといったルールが散りばめられています。これは、同国におけるパン屋の定義や伝統的な技法やレシピに基づいて作られた「トラディション」と呼ばれるバゲットの品質を保護するためなのだそう。これらの法律を守る店で作られるパンのみが「トラディションのパン」を名乗ることができるといいます。
1995年に発令された法律では内容が強化され、「ブーランジュリー(パン屋)」の看板を掲げるのがそれまでよりも難しくなったそう。それをあらわす一例として、法律を守れなかった国内の有名店が潔くブーランジュリーを名乗らなかったというエピソードも。こうしたことからも、同国ではパンにおける法律の厳しさは相当なものであることがうかがえます。
岡本さんによると過去にはバゲットの重量に関する法律も存在していたそうで、店が重量をごまかす.....というケースも多発したとか。「1978年以降になると、パンの価格と重量の自由化が進みました。現在は『バゲットは必ず何グラムでなければならない』などの法律的な規定はなく、店舗ごとに重量は異なります」とのこと。
とはいえ、店頭で表示されている重量と実際との重量があまりにも異なる場合などは「虚偽表示」として取り締まりの対象になる可能性も。また、法律ではありませんが、フランスでおこなわれるバゲットのコンクールでは「サイズ」に関する規定が定められることもあるのだとか。

厳格すぎると思われるフランスのパン事情。ですが「すべての職人のが法律を熟知しているわけではないと思われる」と岡本さん。
「ほとんどの職人さんやお店は代々のレシピを受け継ぎ、それをもとにそれぞれのバゲットを作り続けているのではないでしょうか。バゲットに限らず、伝統的な食文化には論争がつきものです。しかし『正しいか・正しくないか』ではなく、文化そのものを尊重していくことが大切だと感じています」と独自の見解を述べました。
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2022年、バゲットは食文化の象徴として「ユネスコ無形文化遺産」に登録されました。この結果は、フランスのバケットに対しての並々ならぬ思い、そして強いこだわりがもたらしたものなのかもしれません。
(取材・文=つちだ四郎)





