兵庫県のイチゴの名産地の一つ、神戸市北区二郎(にろう)地区で栽培される「二郎いちご」。市場にはあまり出回らないことから“幻のイチゴ”とも呼ばれる地域ブランドだ。約100年の歴史を持つこのイチゴを次の世代へつなげようと、3月20日、初の「二郎いちご祭り」が開かれる。なぜ今、祭りなのか。背景には、産地が直面する課題と、未来を見据えた強い思いがあった。

「二郎いちご」は特定の品種名ではなく、この地域で培われてきた栽培技術や品質基準によって育てられるイチゴの総称。大正10年ごろに栽培が始まり、昭和期には「宝交早生」の導入やハウス栽培の普及によって生産が安定。現在は11月下旬から6月上旬まで長く楽しめる産地として知られている。

そんな歴史あるブランドに転機が訪れている。「二郎いちご祭り」を企画した二郎いちご青年部の西勉さんは「生産者の半分以上が高齢で、5年後、10年後を見据えると担い手不足への危機感がある」と話す。
近隣では新規参入による大規模農業が進む一方、二郎では昔ながらのスタイルが中心。「二郎のいちご街道に来ても直売所が開いていない」といった声もあり、かつては“売り切れる人気”の象徴だった状況も、現在は“供給不足”という課題に変わりつつあるという。
さらに、“幻のイチゴ”と呼ばれることにも複雑な思いがある。「手に入りにくい魅力はあるが、その分、知名度が広がりにくい。近くに住んでいる人でも知らない人がいる」と西さん。新たな客層の開拓は急務となっている。

そうした中で立ち上がったのが、今回の祭りだ。「100年続いた二郎いちごを、次の100年につなげよう」という思いが出発点。2026年=26(にろう)という節目の年に、「まずは一歩踏み出そう」と企画された。
会場では、採れたてのイチゴの販売のほか、いちご大福作り体験、地元店による限定スイーツやドリンクの提供などを予定。地域ぐるみで二郎いちごの魅力を発信する。
「イチゴを通じて、二郎という場所がこれからも元気であり続けてほしい。来てもらって、おいしさを体感してもらえたら」と西さんは来場を呼びかける。
「二郎いちご」の特徴の一つは、現地でしか味わえない鮮度だ。朝に収穫したイチゴがそのまま直売され、直売所内には甘い香りが広がる。「香りはネットでは伝わらない。ここに来て初めて感じてもらえる魅力」と西さんは話す。
神戸市観光園芸協会有野いちご部会の山根康史部会長も「二郎いちごのおいしさは、土壌・水・寒暖差の3つの条件がそろっているから」と説明する。水は六甲山系から流れる清流を使い、昼夜の寒暖差が甘みを引き出す。「朝採れで完熟のイチゴを味わえる産地はなかなかない。ぜひ家族で訪れてほしい」。






