昭和歌謡、昭和ポップスにスポットライトを当てたラジオ番組『中将タカノリ・橋本菜津美の昭和卍パラダイス』(ラジオ関西)の4月3日放送回では、“桜ソング”を特集。昭和から平成にかけて変化した「桜」のイメージについて、番組パーソナリティーの中将タカノリさん(シンガーソングライター、音楽評論家)と橋本菜津美さん(シンガーソングライター、インフルエンサー)が語り合った。

J-POPには加山雄三さんと谷村新司さんの『サライ』(1992年)、福山雅治さんの『桜坂』(2000年)、森山直太朗さんの『さくら(独唱)』(2003年)、ケツメイシの『さくら』(2005年)など、さまざまな“桜ソング”があるが、いずれも平成以降の楽曲だ。
古くから日本人に愛されてきた桜だが、中将さんは「昭和では意外に桜ソングが少なくて、松田聖子さんの『チェリーブラッサム』(1981年)もこのタイトルながら、歌詞は桜と関係ない。あえて挙げるなら軍歌や戦時中の楽曲が目立つ印象」と指摘し、現代ほど数多くの桜ソングは存在しなかったと語った。
番組で1曲目に紹介されたのは鶴田浩二さんの『同期の桜』(1970年)。もともとは戦時中に軍隊内で歌われ流行した曲で、このバージョンは、戦時中に特攻機の整備兵だった鶴田さんの思い入れからカバー企画が立ち上がったもの。しかし、所属レコード会社の問題で歌唱できず、朗読として吹き込まれたという。伴奏をバックに語りを重ねる異色の内容が話題となり、予想外のヒットにつながった。
この前後、日本ではロカビリーブーム、グループサウンズブーム、フォークブームなど、現代のロックやJ-POPにつながる数々のムーブメントが起きていた。一方で、中将さんは「その中に特にめぼしい桜ソングはない」と説明。「軍歌や戦中歌で歌われた桜のイメージを、当時の若者たちが無意識に避けたのではないか」「戦後の高度経済成長期には、日本的なものより欧米風で都会的なものが好まれたのではないか」と分析した。
2曲目に紹介されたのは小柳ルミ子さんの『桜前線』(1976年)。現在では広く知られた曲とは言えないものの、当時はオリコン21位を記録したスマッシュヒット。タイトルに“桜”を冠しながらも、春先の旅先で出会った人や風景の温かみを描いた作品となっている。
続いて紹介されたのは、山崎ハコさんの『桜の日』(1977年)。アルバム『藍色の詩』収録曲で、桜が舞い散る中、少女が故郷を離れるべきか葛藤する情念的な1曲だ。後年のJ-POPにも通じる桜のイメージが感じられ、橋本さんも「ハコさんの曲は初めて聴いたけど、センシティブでめちゃくちゃいい曲」と印象を語った。
4曲目に紹介されたのは、さだまさしさんの『桜散る』(1984年)。アルバム『Glass Age -硝子の世代-』収録曲で、失恋した男性の心情を“散る桜”に重ねた作品だ。橋本さんは「こんなに繊細で美しい失恋の曲ってあるかなと気持ちがホワホワしました」とコメント。今では定番となった“桜=別れ”のイメージを、ポップスの中で早い段階から描いていた楽曲とも言えそうだ。





