「どうせ挑戦するなら神戸や、という思いだったんです」
そう語るのは、香川県・小豆島のオリーブ農園「井上誠耕園」3代目園主の井上智博さん。5月11日、神戸・元町に関西初となる直営店をオープンした。
井上さんにとって、神戸は特別な街だ。
社会人としてのスタートは、神戸市中央卸売市場の仲卸商。小豆島から運ばれてくる柑橘を扱いながら、港町・神戸で働いていた。
「神戸は第二の故郷。ジャンボフェリーもありますし、小豆島との縁が深い街なんです」
今回の出店は、通信販売を中心に事業を続けてきた同園にとって、大きな転換点でもある。
「県外でリアル店舗を本格的に出すのは、私の中では社運をかけた挑戦。まずは神戸で集中的にやってみようと」
背景には、「オリーブの奥深さを、もっと知ってほしい」という思いがある。
「今はどこの家庭でもオリーブオイルを使う時代。でも、品質の違いや面白さは、まだまだ伝わっていないと思うんです」
井上さんは、ワイン文化を例に挙げながら、「同じ品種でも、土地や作り手で味が変わる」と説明する。
「オリーブも本当はそうなんです。手摘みしたり、自然ろ過したり、いろんなこだわりがある。でも、それはネットや文章だけでは、なかなか伝わらない」
だからこそ必要なのが、“人を介して伝える場”だという。
「AIも発達して、情報もいっぱいある時代ですけど、結局、人は人に癒やされるんですよ」
スタッフには、「愛想よく、小豆島自慢をしてほしい」と伝えている。
「オリーブ自慢でも、みかん自慢でもいい。売るだけじゃなくて、“なんかええ店やな”と思ってもらえたら」
井上さんが繰り返し語ったのが、「小豆島に来てもらいたい」という願いだった。
オリーブだけではなく、そうめん、しょうゆ、佃煮――。島には400年続く食文化がある。
「背景を知ってもらうことで、商品の見え方も変わると思うんです」
井上さんは、そんな“小豆島の物語”を、神戸から少しずつ伝えていきたいと話している。



