太平洋戦争遺跡群が点在する鶉野飛行場跡(兵庫県加西市鶉野町)を9月16日、修学旅行生が初めて訪れた。大阪府松原市立松原第六中学校の3年生132人。戦時中の名残を留める防空壕跡、対空機銃座跡、爆弾庫跡などを巡る平和学習に取り組んだ。
一行はこの日朝、バス4台に分乗して旧姫路海軍航空隊訓練基地だった鶉野飛行場跡に到着した。同校は「遊歩道が整備されて戦争遺跡群が徒歩圏内にあり、説明も受けられる」ことなどから訪問先に決めたという。4、5人のグループに分かれて行動し、それぞれの遺跡でボランティアガイドの説明に耳を傾けた。
旧日本海軍の戦闘機「紫電改」の実物大模型が展示されているコンクリート製滑走路跡の備蓄倉庫前では、戦史研究家の上谷昭夫さん(81)=兵庫県高砂市=が「軍隊の滑走路が当時のまま残っているのは全国で鶉野だけ。この1200メートル滑走路に隣接する組立工場で紫電改が46機つくられ、試験飛行も行われた」と説明し、「ここでは皆さんとほぼ同年代の16歳ぐらいからの若者が、戦闘機に乗るための練習をした。戦争では多くの若い人が亡くなった。命の大切さを感じてほしい」と呼び掛けた。
戦時中は自力発電施設だった巨大防空壕跡のシアターでは、鶉野飛行場から飛び立った姫路海軍航空隊の特攻隊「白鷺隊」の遺書を紹介する映像を見た。
見学を終えた後、女子生徒の一人は「悲惨なことがあったのを知り、今の平和が当たり前のことじゃないと分かった。ここで思ったことを周りの人たちに伝えたい」と話していた。
最後に滑走路跡わきに立つ平和祈念の碑前で平和集会を開き、学年代表が「人間の命を同じ人間が奪う戦争は起こしてはならない。私たちは言葉で解決する世界を創りたい。戦争についての学びを語り継いでいく」と誓いの言葉を述べた。
加西市は2019年6月から紫電改の実物大模型を公開するなど、鶉野飛行場跡の平和教育活用に向けた整備を推進中。松原第六中のほかにも11月末までに、県内外の17校が修学旅行で訪れる予定という。