厚生労働省の調査では入浴中の事故死者数は年間約1万9,000人。これは交通事故による死者数の4倍にのぼる。その主な要因が「ヒートショック」だ。暖かい部屋から冷え切った脱衣所に入り、そこから熱い湯船に浸かる。こうした急激な温度変化が体内に大きな負担をかけ、最悪命の危険を招くことも……。身近な危険といえる入浴事故、「ヒートショック」について、神戸市消防局に聞いた。
――神戸市内での入浴事故はどれくらい起きていますか。
神戸市では、2019年度に入浴時の事故として、403人を救急搬送していて、その83.4パーセントが65歳以上の高齢者でした。寒くなる12月の1か月間だけで見てみると、暖冬だった2019年12月は88件の事故でしたが、今年度(2020年12月)は106件と増加しており、入浴事故について改めて注意していただきたいです。
――入浴事故の原因となる「ヒートショック」について、改めて教えてください。
急激な温度変化による血圧の変化によって、体に大きな影響を及ぼすことを「ヒートショック」といいます。お風呂場で起こりやすいイメージですが、浴室だけでなく、冷え込みやすい脱衣所やトイレなどでも注意が必要です。
症状としては、脈拍が速くなったり、一時的に脳虚血状態になり、意識消失したりすることがあります。ちなみに「ヒートショック」は、もともと医学用語ではなく、マスコミによってつくられたものなんです。ですので病院の診断で「ヒートショック」と書かれることはありません。
――寒さに体が適応できない、ということでしょうか?
リビングとか暖かいところから寒いところへ移動すると体が縮こまりますよね。あのとき、体内では血圧が急激に上昇していて血管や心臓に負担をかけているんです。逆に、冷えた浴室から温かい浴槽へ入ると血圧が急激に低下するので、一時的に脳に血液が届きにくくなって意識を失い、溺れてしまうこともあります。