神戸市北区で2017年7月、祖父母や近隣住民ら5人を殺傷したとして殺人や殺人未遂などの罪に問われた無職の男性被告(30)を「心神喪失状態だった疑いがある」として無罪とした11月4日の神戸地裁の裁判員裁判判決について、神戸地検は16日「判決には重大な事実誤認がある」として控訴した。控訴期限は18日だった。
公判で、男性は5人を殺傷したとする起訴内容については「間違いない」と認め、弁護側は重度の統合失調症により心神喪失状態だったとして無罪を主張。検察側は「責任能力は低下したが残っており、心神耗弱状態だった」と無期懲役を求刑した。
4日の判決は、捜査段階に2回実施された精神鑑定のうち、被告が統合失調症による幻聴や妄想の圧倒的影響を受けたとする1回目の鑑定結果の方が鑑定医の面接回数などから合理的だとして重視。
男性は周囲の人に関し、人間と同じ外見だが自我や意識を持たない者だとする妄想を信じ、正常な精神作用が機能していない状態で犯行に及んだと判断した。
男性は2017年7月16日、同居する祖父母(いずれも当時83)や、近くに住む女性(当時79)を包丁で刺すなどして殺害したほか、母親(57)や近所の別の女性(69)にもけがをさせたとして起訴された。
刑事責任能力については刑法39条で、心神喪失者の行為は罰しないとし、心神耗弱者は刑を減軽すると定められている。