兵庫県立がんセンター(明石市)で9月、左腎がんの患者に行った手術で、本来なら腫瘍がある一部を摘出するべきところを、腫瘍がない別の場所を摘出するミスをしたため、結果的に腎臓を全てを摘出する医療事故が発生した。兵庫県が26日、発表した。
2021年8月30日、執刀医(50代男性)と助手(30代男性)の2人は、手術支援ロボット「ダヴィンチ」を使い、左腎にステージ1のがんが見つかった50代の男性に、腫瘍の摘出手術を行った。腎臓の表面には異常が確認されない「埋没型」の腫瘍だったため、エコーで位置を確認したが、誤った位置にマーキングし、もともと腫瘍がない箇所を摘出。手術後に検体を確認したところ、腫瘍が確認されなかったためミスが発覚し、9月3日に再手術をしたが、その際、左の腎臓全てを摘出しなければならなくなった。
執刀医と助手はともに、腎臓にできた埋没型の腫瘍を摘出する手術の経験がなかったという。県立がんセンターでは、エコーの画面は反転して表示されるが、執刀医と助手はいずれも把握していなかった。また、腫瘍があると予測したところがたまたま隆起して(盛り上がって)いたことから、その部分に腫瘍があると思いこんだ。さらに、ロボットを使っていたことから、手術終了前に検体にミスを入れて腫瘍があるかどうかの確認が遅れ、閉腹後に判明したことも、全摘出につながった。
県は、エコー端末の構造や表示設定の周知をはじめ、腫瘍が目で見てわからない場合は検体をメスで切って腫瘍の有無を確認するよう徹底する。また、執刀医と助手のどちらか一人は経験のある医師が担い、切除する範囲を決める時にはダブルチェックをすることなどで、再発を防ぎたいとしている。
男性患者は9月8日に退院し、仕事にも復帰しているが、現在も経過観察が続いているという。
八木聰・県病院事業副管理者は、「県立病院として、安全な医療の提供に努めるなかで、このような事案が発生したことについて、大変申し訳なく思っている。安心できる県立病院の実現のため、今後より一層、医療安全対策の取り組みを進め、再発防止に努める」とコメントした。