旧優生保護法(1948 ~1996年)下で不妊手術を強いられたのは憲法違反として、聴覚障害のある大阪府の70~80代夫婦と、近畿在住で知的障がいのある70代女性が国に計5500万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は22日、一審・大阪地裁判決を取り消し、国に計2750万円の賠償を命じた。
夫婦は1974年、妻が帝王切開で子を出産した際、知らぬ間に不妊手術を受けた。女性は日本脳炎を患って後遺症で知的障害になり、1965年ごろ不妊手術を強いられた。
神戸、大阪、東京など全国9地裁・支部に起こされた一連の訴訟で旧優生保護法の違憲性と国の賠償責任をいずれも認め、原告側が勝訴したのは初めて。一審判決はいずれも賠償請求を退けて原告側が敗訴している(4件の違憲判断)。
神戸地裁では聴覚障害者の夫婦2組と先天性脳性まひのある女性の計5人が国に計5500万円の損害賠償を求めたが(兵庫訴訟)、2021年8月に敗訴、大阪高裁に控訴している。3月11日には東京高裁で控訴審判決が言い渡される。
2020年11月の一審・大阪地裁判決は旧法を違憲としつつ、20年の除斥期間を適用し、請求権は消滅したと認定、賠償請求を棄却していた。
一方で旧法の立法目的を「極めて非人道的、差別的だ」と指摘。「子を産み育てる意思決定の自由を侵害した」として、幸福追求権(憲法13条)や法の下の平等(同14条)に違反すると認めた。
大阪高裁も一審に続き違憲とした。一審と異なるのは、手術時から提訴までに損害賠償請求権が消滅する20年の「除斥期間」について「そのまま適用することは正義、公正の理念に反する」と判断した点だ。
「戦後最大の人権侵害」と主張する被害者の救済のあり方が改めて問われる。
大阪高裁判決は、賠償請求権が消滅する除斥期間の起算点を不妊手術を受けた時ではなく、旧優生保護法の条項を廃止し、母体保護法が施行される前日の1996年9月25日とした。