食生活に欠かせない牛乳や乳製品。しかし、長引くコロナ禍により、その消費は減少しています。加えて、乳牛に与えるエサの輸入価格が高騰。いま酪農家は、最大と言っていいほどのピンチを迎えています。
そこで、酪農家の現状や取り組みについて、兵庫県赤穂市にある「丸尾牧場」の牧場主・丸尾建城さんに聞きました。聞き手は芥田愛菜美さんです。
現在、丸尾牧場では、成牛を120頭ほど飼育しており、そのうち牛乳を搾れる「搾乳牛」は114頭。毎日3.6トンほどの生乳を出荷しています。
――丸尾さんは、なぜ酪農家になられたのですか?
【丸尾さん】 昭和31年(1956年)に、親父が搾乳牛1頭から牛飼いをはじめました。私も学生の頃から家業の酪農を手伝っており、徐々に頭数を増やして規模を拡大。2010年には現在と同じ100頭まで牧場を大きくしてきました。まさに「牛飼い」の人生です。
――この辺りにはどれくらい酪農家があるのですか?
【丸尾さん】 今はここだけなんです。1930年代は村だけで10件ほど、赤穂市全体では80件くらいありました。しかし、酪農の仲間はどんどんリタイヤしてしまい、赤穂市で唯一の酪農家になってしまいました。
――とても貴重な牧場なんですね。周りが閉めていく中で、なぜお続けになったのでしょう?
【丸尾さん】 もともと親父から「牛乳は健康にものすごくいいもの」と言われ続けてきました。母は昔から体が弱かったため(父は)牛乳を飲ませたかった。けれど当時は高価で、なかなか手に入れられませんでした。そこで、ちょっとでも、牛乳を搾って母や自分に飲ませて健康になってほしいと牛を飼い始めた……それが、酪農を始めたきっかけだと聞いています。
私が続けているのも、根本にあるものが同じだからです。今は、みなさんに健康になってもらいたいという思いで続けています。