《安倍元首相銃撃》日本の厳重な銃規制と「防ぐ術(すべ)ない」手製の銃乱射のはざまで 弁護士に聞く | ラジトピ ラジオ関西トピックス

《安倍元首相銃撃》日本の厳重な銃規制と「防ぐ術(すべ)ない」手製の銃乱射のはざまで 弁護士に聞く

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 安倍晋三元首相が7月8日、奈良市・近鉄大和西大寺駅前での街頭演説中に銃撃され死亡した事件で、逮捕された元海上自衛隊員の無職の男(41)が発射した「手製の」銃の構造は、金属製の筒2本を粘着テープで束ね、弾丸はカプセルのような小さな容器に入れられていた。 同日、奈良県警による男の自宅の家宅捜索中に、「危険物が見つかった」と住民に避難を呼びかける一幕もあった。

献花台に訪れる人は絶えない<2022年7月11日午前・奈良市 近鉄大和西大寺駅前>
安倍元首相が銃撃された現場<2022年7月11日午前・奈良市 近鉄大和西大寺駅前>

 捜査関係者によると、男は「一度に6個の弾丸を発射できるようにした」 とも話しており、それぞれの筒から発射する散弾銃に似せて製作した可能性がある。

 銃犯罪率が世界でも極めて低いとされる日本で、安倍元首相の銃撃事件は世間に大きな衝撃を与えた。 これまでにも政治家が銃や刃物で狙われた事件は数多くあった。しかし市民の多くは「安全な日本でこんなことが起きるのか」「警備体制はどうだったのか」との疑念を抱いている。

 銃犯罪に詳しい藤本尚道弁護士(兵庫県弁護士会所属)は2000年代、販売目的でアメリカから拳銃を密輸したとして国際手配され、日本で逮捕、起訴された関西在住のガンショップ経営者(当時)の弁護を担当した。
 この経営者は、別に複数の拳銃や多くの実弾なども隠し持っていたとされ、当時、一部の論調で拳銃などの密輸が横行し、一般人にも銃器が浸透して日本も「銃社会」になりつつあるのではないか、との声もあったという。
その後の日本はどうか。藤本弁護士に聞いた。

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 この事件から10年以上が経過して、日本が「銃社会」になったかと言うと、そんなことはない。確かに2019年、関西で起きた暴力団同士の抗争で拳銃のみならず大型の自動小銃が使われた事件が取り沙汰されたが、それが一般化したわけでもない。

 警察当局の銃器の取り締まり状況を見ても、暴力団の武器庫摘発はめったになく、むしろ銃器収集家のコレクション(ほとんどがモデルガン)の押収がほとんどで、必ずしも暴力団の武器庫の摘発に注力しているわけではなく、警察庁の統制のもと、単に「押収量」に終始しているようにも思える。

 今回の事件が指し示すのは、警察が本来注力すべきの、極左あるいは極右系の組織的活動をターゲットにしたテロ対策には限界があり、今回の容疑者のように組織的裏付けを持たないとみられる(この点は今後の捜査を待つ必要がある)テロリストの出現は、ほとんど防ぐ方法がないといえることだ。

特に、今回の「手製銃器」は、誰でも、とは言えないまでも、構造がさほど難しくなく、その材料が一般人であっても入手可能なものではないかと推察される。銃器の構造を少し学んで、アイデアを練れば、製作できるレベルのものだといえる。

 こうした事件が起きると、模倣犯の出現が危惧され、選挙での応援演説など大勢の人々が集まる空間での警備体制など十分に警戒すべきだが、その一方で、日本人一般に言えることとして、強い「銃器アレルギー」があり、このことは日本の「銃社会化」を防ぐための大きな力になるだろうとも感じる。

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