明治初期に始まり、兵庫県姫路市・大塩地区などに残る独特の”七夕飾り”を再現した催しが、山陽電鉄大塩駅(姫路市大塩町字宮前)で5日、始まった。
かつて「子どもたちが将来、着る物に困りませんように」と願いを込めた「七夕さんの着物」が、夕暮れ時の風に揺られて私たちの心を和ませる。開催は7日までの3日間。
姫路・大塩地区の魅力を発信する「大きな縁(塩=えん)のまちづくり実行委員会」が、失われつつある地域の伝統を絶やすことがないよう、2021年に始まった。 2022年春、改良工事を終えたばかりの大塩駅で、竹にくくりつけた約50センチの紙衣や提灯が並んでいる。
大塩地区など播磨灘沿岸の地域では、中暦(ちゅうれき・祭事など季節のイベントを元々の日取りから1か月遅れて実施する「月遅れ」)の8月6日の夜に紙で作った着物「紙衣(かみごろも)」を飾りつける七夕があったという。
大塩地区では紙衣を「七夕さんの着物」と呼んでいる。これらを販売する店舗は、現在は柴田提灯店(姫路市大塩町東之丁)のみとなった。元々は塩田仕事に従事していたが、太平洋戦争後にくら替えした柴田提灯店では昭和30年代に、提灯を買いに来た客から「七夕さんの着物を作ってほしい」と頼まれて作りはじめた。「元々、習慣としては各家庭で作っていたが、どういうわけか引き受けるようになって」と主人の柴田幸男さん(89)は話す。