大きな社会問題として周知されながらも、その実態が見えにくい「ひきこもり」。中高年のひきこもりの人たちを高齢の親が支える「8050問題」がクローズアップされる中、神戸市福祉局ひきこもり支援室(神戸ひきこもり支援室)は市民に向け、オンラインによる講演会「令和4年度市民向けひきこもり講演会~経験者から学ぶひきこもり~」を開催している。専門家に聞いた同問題の現状や支援策などとともに、実際にひきこもりの時期があった2人の男性の経験談など、講演会の内容を全3回に分けて紹介する。第1回は、神戸市看護大学の船越明子教授と神戸ひきこもり支援室の加島英義さんに、ひきこもり問題の現状と神戸市の支援の取り組みを聞いた。
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▽全国で115万人
―ひきこもりの皆さんへの理解を深めてもらい、当事者そしてご家族を孤立させないために私たちにできることは何か、社会には何が求められているかを皆さんと一緒に考えていけたら良いなと思っています。あらためてお伺いしたいのですが、ひきこもりとはどのような状態をいうのでしょうか。
船越:家族以外、人と交流を避けて地域で孤立している状態にある人のことをいいます。内閣府の調査では15歳~39歳の若者の中で約54万人、40歳~65歳まででは約61万人と推定されています。40歳以上が多いですね。
―若い子が学校に行きたくないからという理由で始まるイメージがあったので、ちょっとびっくりしました。
船越:そうですよね。80歳代の親と50歳代のひきこもっている子がいっしょに暮らす状態の「8050問題」。ひきこもり状態が長期化し、年金暮らしの親の収入に無職の子どもが頼っている不安定な生活です。
―親が高齢になって亡くなった後、その子どもがさらに孤立するという大きな問題ですね。
船越:そうです。先ほどのひきこもりの人数、合わせると115万人になる。これは日本の18歳人口とほぼ同じです。親戚やご近所の方などをたどっていくと、誰でも18歳の人にたどり着くのではないかと思いますが、ひきこもりの人には出会わないのでは。それはひきこもりであることを打ち明けていないだけで、実はいるのだと考えられます。
―たしかにそう考えると、もしかしたらご近所におられるかもという気がします。
船越:はい。なので決して他人事ではなく、身近な問題と考えてもらえたらと思います。