秋が深まり、これから新酒の季節を迎えます。“日本の酒造り発祥の地”は島根県とされていて(※1)、今も30蔵が操業しているのだそうです。そんな地酒に合うものといえば、やはり地元のグルメ。新酒に合わせるのにもぴったりな、島根のソウルフードを2品紹介します。
■赤てん
スケトウダラのすり身に赤唐辛子を加えて練り、パン粉をつけて揚げたもの。唐辛子のピリ辛さと、パン粉のサクッとした食感が特徴です。
起源は、戦後の食糧難の時代のこと。当時、飲食店で、高価だったハムカツを作ってほしいとの依頼があり、似たような触感と色味になるよう試行錯誤した結果、誕生したのが赤てんなのだそう。
冷たいままでもおいしいのですが、軽く焼いたりあぶったりしてマヨネーズを付けると、さら味わい深くなると評判です。
■あご野焼き
島根県の魚でもある「あご=とびうお」のすり身に、各製造者秘伝の調味料を練り合わせ、芯棒に巻き付けて焼いたもの。焼き加減を見ながら、丁寧に火を入れていきます。
特徴のひとつは、まるで皮を焼いたような表面です。針がついた“たたき棒”という道具で表面を刺して、焼きムラをおさえているのだとか。針のわずかな穴から染み出る調味料が、独特の皮を作るとのこと。
わさびじょうゆをつけるのが定番ですが、フライパンで5分ほど炒めると香ばしくなります。粗挽きコショウや塩をまんべんなくまぶすと、ひと味違ったおいしさになるといいます。
お酒と、その土地ならではの滋味。この味覚の秋に併せて楽しみたいですね。
※1『出雲国風土記』による