筋肉組織の中に骨ができる難病「進行性骨化性線維異形成症(FOP)」と闘う兵庫県明石市在住の山本育海さん(24)と、関西の高校生たちが、治療法や新薬開発の研究のための募金を呼びかけている。
育海さんは小学3年だった8歳の時にFOPと診断された。FOPと闘う患者は、育海さんをはじめ日本に数十人いるという。最初は病名もわからず、育海さんは母親・智子さんとともに治療法を見つけるために病院を渡り歩き、FOPの難病指定化に向けて奔走した。
iPS細胞を活用した治療法に活路を見出し、その研究のために、京都大学iPS細胞研究所(所長・山中伸弥教授)に自身の細胞を提供する決断をした。そのためには皮膚を切除しなければならず、FOPが進行する危険性が高まり、生命にも関わるリスクを背負った。
そして育海さんが兵庫県立明石商業高校在学時の2015年に、資金不足に悩む研究所のためにと、同級生らと「193(いくみ)募金」を始めた。しかし、2020年に突然世間を襲った新型コロナウイルス感染拡大は、募金活動に大きな影響を与えた。育海さんが感染するとFOPの進行にも関わってくるため、感染予防にも気を配りながらの生活が続く。
特に2022年は、新型コロナウイルスと季節性インフルエンザの同時流行が懸念されている。筋肉に刺激を与えてしまうため、育海さんはコロナワクチンを打つことができない。インフルエンザの予防接種は受けたが、副作用で顔が腫れてしまう。育海さんの日常は、いつもリスクと背中合わせ。それでも智子さんと力を合わせて歩んできた。
「193(いくみ)募金」は、FOPだけでなく、多くの難病の研究が進むようにiPS細胞研究所を支援するもの。こうした思いに、地元・明石市のみならず、神戸・大阪の多くの高校生らが募金活動に賛同し、昨年(2021年)は総額248万6609円が集まった。
そして今年も、育海さんが25歳の誕生日を迎える12月14日までに、明石市をはじめ兵庫県、大阪府の高校15校の生徒が、登下校時やランチタイムなどに「193(いくみ)募金」への協力を一斉に呼び掛ける。一部の高校は、等身大の育海さんのパネルを制作して、ターミナル駅などFOPの存在自体を訴えかける。
一方、「高校生に負けないよう大人も頑張りたい」と2016年に始めた「193O(いくみおーえん)円募金」の活動も今年で 7回目となる。2022年も10月から活動を始め、12月14日までに「いくみ」にちなみ193万円を目標にしている。いずれの募金も、FOP を含めた難病研究のため、全額を京都大学 iPS 細胞研究所に寄付する。
育海さんは11日、明石市内で取材に応じ、「高校卒業後、母校(明石商業高)の後輩をはじめ、さまざまな学校の皆さんが募金活動を引き継ぎ、輪が広がっていることに感謝したい。母と私だけでは、ここまでできなかった。皆さんの協力、応援が力になっている。すべての難病を一日でも早く治せる日が来るように、研究者の皆さんに頑張っていただきたいし、患者の私も、出来る限りのことを尽くしたい」と前を向く。
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